【異剣戦記ヴェルンディオ】第一巻――バトル? ほのぼの? シリアス? とにかく何かワクワクする物語の開幕【ネタバレ感想】
現代漫画もいい……けれど、濃厚なファンタジーを見たい! ストーリーがしっかりしていて、でもくすっと笑えるシーンもあるような、暗いだけでも明るいだけでもないお話が見たい!
という方にぜひともおすすめしたいのが『異剣戦記ヴェルンディオ』です!
この白髪の女性が主人公……ではありません(笑)。
表紙の後ろに写っている男性が主人公のクレオ。女性がコハクと言いまして、二人の出会いと絆。そこから垣間見える盛大な物語がなんともワクワクする漫画です。
剣や魔法の世界を生き抜く傭兵クレオが主人公なのですが、彼がまたいいキャラしてます。
じゃあこの表紙の女性であるコハクはなんなんだ、という疑問が湧いてきますがもちろん彼女も重要人物。単なるヒロインでもなさそう?
しかもいきなり……主人公が……!
えっ!?
ど、どうなるってんでぇい!
今回はそんな二人の出会いや、二人がどんな人なのかが分かる導入、第一巻の感想をやっていきたいと思います!
ちなみにこの漫画の作者、七尾ナナキ先生はHelckも書かれていてそちらもとても面白いので、気になった方は【Helck】史上最高の超王道少年漫画、キャラクター紹介&感想【まとめ】も御覧ください。Helckはアニメにもなりました!
このHelckとヴェルンディオの世界……繋がっているとも言われてますが……どんなつながりがあるのか。そもそも本当に繋がりがあるのか。
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第一巻説明
著:七尾ナナキ・連載:裏少年サンデーコミックス(小学館)
あらすじ・内容
絶望の戦場で…酒場経営はじめます!
傭兵歴10年の男・クレオは
不思議な少女・コハクと出会う。
強大な力を持つ「異剣」が飛び交う
戦場を生き延びるために、
二人が始めたのは――
兵士たちが集う「酒場」の経営!?
壮大な拠点防衛ファンタジー、開幕!
【異剣戦記ヴェルンディオ】第一巻説明文より
ほえー?
戦記は分かるが、異剣? ヴェルンディオってなんだ?
ってか酒場を始める? 良くわからないなぁ。
これだけの情報だとわからないですよねぇ。
とんでもない力を持った剣があちこちから発掘され、戦争というものがいろいろと意味が変わってしまった世界の話になります。
どういうことか、詳しく各話を見ていきましょう!
各話の感想
傭兵クレオと不思議な亜人コハクの出会い。
- プロローグ
- 第1話――異剣
- 第2話――水源
- 第3話――酒場
- 第4話――鬼雷の剣士
- おまけ
シリアスなのかコメディなのか。ほのぼのなのか。
プロローグ――出会いと死と未来
初っ端はカラーページで、主人公のクレオが状況を説明してくれてます。
彼は傭兵として王国からの依頼である山賊討伐を引き受けたようです。新人傭兵ということではなく、今までも山賊討伐をしてきたこともあってか、コツがわかっている、と。山賊頭領を倒すのは自分だとクレオは勢いよく任務へ向かい
逃げ出します!
うおおおいっ! 主人公!
開始早々「自惚れていた!」と心のなかで叫びながら、山賊たちから逃げる主人公クレオ。
王国の話では壊滅寸前、とのことだったのですが壊滅寸前どころか数も多いし下っ端は強いし、頭領に関して言うと別格の強さで集まった傭兵たちの殆どがやられてしまったとのこと。
クレオがめちゃくちゃ弱いと言うより、山賊たちが強すぎたんでしょうね。
白髪の亜人コハク
必死に逃げるクレオ。報酬よりも命が大切だ、と森の中を進んでいくわけですがそんな彼へと襲いかかる人影。短剣が彼の胸に突き刺さる。
なぜだと疑問に思いながらも、自分はこんなところで終わるのかと胸を押さえて倒れ込むクレオ。そんな彼を静かに見つめるのは、表紙に載っていたあの女性。コハク。
と、クレオが目覚めます!
おう。良かったぜ。
いきなり主人公が死んだかと思った。
どうやら玩具の短剣だったみたいですね。
若干ですがここで亜人(獣の耳)のことが語られますね。説明と言っても、亜人への差別があるとかその程度ですが。
二人は初めて会ったようなのですが、長々と会話している暇はありません。まだ周囲に山賊たちがいるのです。
森に響く悲鳴にクレオは我に返って逃げ出します。そんなクレオをコハクが追いかけます。
助けてあげようか、とコハクは言いますがクレオとしては会ったばかりの人間を簡単に信用できませんのでなんとか離れようとしますが、コハクはしつこく……そして体力、といいますか。身体能力が優れているのか、全然追い払えず、クレオが肩で息をしていても平然としています。
水も食料も置いて逃げてしまったクレオにコハクはそれらを渡してくれます。善意の施しは基本疑うクレオですが、殺す気ならとっくにしているという言葉に確かに、と頷いてもらうことにしました。
それでもコハクのことを怪しいと疑い続け、何が目的だと問います。
まあ正直俺っちがクレオの立場でもコハクは怪しいと思っちまうだろうなぁ……水と食料くれた恩人としても。
おもちゃの剣とはいえ、襲いかかってきてますしねぇ。
一見良い人そうに見えるからこそ怪しい。
コハクの願い
コハクは「クレオの生存」を望みました。
不思議な話です。それではまるでクレオが死ぬみたいではないですか。
おいおい、迫力ある顔で「死ぬ」と言い切ってるぜ。
未来の予知ができる、と言ってますね。
読者としては「本当なんだろうな」と思ってしまいますが、クレオは「うわ。やばいやつに絡まれた」的に嫌そうな顔してます。
コハクはそれに気分を害してもう何も言わないとそっぽを向いてしまいましたね。
コハクはとにかくクレオを守りたいようです。
クレオはコハクを疑ってはいますが、クマが現れてコハクが戦おうとした時にはその腕を引っ張って一緒に逃げました。一人で逃げても良い。むしろコハクを囮にして逃げたほうが生存率上がるでしょうに。
目つきも鋭いですし口も悪いですが、根っこはとても優しいのがこの行動からも分かりますね。
クマから逃げた後、クレオは言います。彼は最近家を買ったそうです。小さなね。お金溜まったら家畜買って畑して、自給自足の生活をしてのんびりしようというのが彼の夢だそうです。
だからそれまで死ねない、と。
コハクも賛成します。拠点を持つのは守るのにもいいから一緒に住む、と。
断る、いや住む、とかやり取りしていると王国の砦が見えてきました。あそこでコハクと別れると思うクレオでしたが、砦の様子がおかしい。
盗賊頭領VSコハク
門が開きっぱなしで、中では……王国兵が倒れていました。
さ、山賊が街を支配してやがる!
なんと山賊だけで大きな砦を落としてしまったようです。本当に別格の強さなんでしょうね、山賊の頭領。
クレオはどうしてこうなったと思い、コハクの予言を思い出しましが必死に否定しました。こうなったのは運命などではなく、自分のせいなだけだ、と。
生き残るために、と考えるクレオ。
山賊たちがコハクを見て「女連れだ」「亜人かよ」「売る」などと言ってますね。中々に無法地帯な世界のようです。
クレオは自分が時間を稼ぐから逃げろ、などとコハクに言います。
自分自身でも何をしてるんだ、と疑問に思うクレオ。マイホームで過ごしたいのに、と思うのに叫んで敵に向かっていくクレオ。
生き延びたいならコハクを囮にすればいいのに出来ないあたりに人の良さが見えてますね。
そんな事のんびり言ってる場合じゃねーよ!
クレオが……って、石飛んできた?
山賊たちへ向かって飛んでいく石。気絶していく山賊たち。コハクの魔術です。
魔術などが当たり前にある世界ですが、クレオはこんなすごい魔術は見たことがない、と言います。
うおおっすげぇ!
あっという間に山賊たち倒してしまったぜ!
ここのコハクがなんとも美しい。
相変わらず先生は戦闘中のキャラを美しく描かれる。
と、コハクがクレオを叱ります。今のはどう考えても死にに行ってたようなものですしね。クレオに生きていて欲しいコハクからすると良くない行動です。
でも守ろうとしてくれたことにはお礼を言います。
そんな時に二人の周囲を炎が暴れまわります。
どうやら山賊頭領の能力のようです。ビビるクレオですが、コハクはこの程度の炎は大したことではない、と言います。もっと凄い術者を知っている、と。
山賊の頭領は強い敵と戦いたいタイプらしいですね。コハクが強いと理解し、彼女との戦いを望みました。
そしてコハクはまったく慌てることなく、「これからの時代を良く見ておいて」とクレオに言います。
頭領のもつ剣から炎が吹き出ます。
剣……異剣ってやつか!
タイトルにある異剣。
まだ物語上の説明はありませんがそういうことなのかな、という感じがしてきますね。
一対一の戦闘なはずなのに、大規模戦争みたいな、訳の分からない状況になっているのを見てクレオは「夢か」と思ってしまいます。それは今までの戦いの常識とは一線を画す光景なわけです。
傭兵を10年してきた彼がそう思うわけですし、相当おかしなことが起こっている。
山賊頭領はすごく強いコハクをしてもかなり強いのだなと分かる描かれ方をしているんですが、それでもコハクは勝ちました。途端に山賊たちは逃げ惑います。頭領が強いから、ということでついてきていたからです。
最後の一撃で腕を怪我するコハク。頭領が握っていた剣をじっと見つめるコハク。
頭領が倒れる前に「力をいつもより引き出せた」と言っているんですが、これが結構重要だったりします。
力を引き出せても、コハクに傷をつけるので精一杯だったわけですが。
それだけ強くても……無理なことがある
クレオはホッとするものの、いまだに信じられずにいました。城壁はぼろぼろになっていて、それが攻城兵器をつかってとか多くの兵士同士の戦いでとかではなく、たった二人の戦いでそうなったのですから。
未だに怪しいとコハクのことを思っているクレオですが、さすがに飯くらいはおごってやろうか、などとは考えます。家には流石に住まわせないけど、と。
そしてそんなクレオに何かが飛んできて……彼の胸を貫きました。
え?
これは……矢?
王国の援軍がやってきたようです。精鋭部隊。
クレオ達は山賊では有りませんが、まあ王国からしたら間違えたとしてもおかしくはないですね。
走馬灯が思い浮かぶクレオ。死にたくない、と思う彼を見下ろすコハク。
単純な悲しい、という顔をするわけではなく、どこか淡々とした表情でクレオの死を受け入れてました。どうにかして生かそうとした彼の死を。
矢を防いだとしても別の要因で死んだ? 運命?
ここらへんはまだ良く分かりません。
「抗ってみたんだ。けれど駄目だった。
いくら未来を予知できても私では、たった一人運命さえ変えることはできなかった」
予知ができてもそう簡単に未来を変えられるものではないようです。けれどもコハクはクレオと接したことを後悔はしていない。接したことでクレオがどういう人物か、少しでもわかったからです。
目つきも口も悪いですけど、心根は本当に優しく真っ直ぐですよね、クレオ。
コハクはまた術を使って、土を隆起させて周囲から姿を隠し、水? がクレオを覆っていきます。
クレオは「ようやく見つけた希望」らしく、コハクは彼と接したことで彼にすべて賭けてみることにしたらしいです。
死の運命は変えられない。
ならば、
それを受け入れた上で、
あなたを蘇らせる。
「私の命をあなたにあげる」
「クレオ…クレオ・ヴェルンディオ…。
私が見た未来を、変えてみせて」
ここでカラーページがドーン!
うおおっ?なんだこの景色。剣が一杯で、空が赤くて……。
生き物の姿が全く無く、奥にある青白く光る欠けた岩山、空に浮かぶ月のような天体……んー、なんでしょうねこれ。
七尾先生の前作では物語の最初はもっとコメディ要素強かったんですが、今回は最初から結構壮大そうな雰囲気が漂ってますねぇ。
いやでも、いい! こういうファンタジーはやはり熱くて燃えてきますね!
第1話――異剣
クレオの幼少期の様子から始まります。流星群を見上げて、人並みの生活を願っていました。
と、夢だったみたいですね。
彼が起きるとそこは廃墟の中で、寝具が敷かれていました。当然見覚えは有りません。
で、何が起きたかを思い出していくクレオ。矢が自分の胸を貫いたのも思い出し、自分の体を見ますが痛みはありません。ちゃんと生きてます。
コハクのことも思い出し、完全に意識を失う前にコハクの「命をあげる」という言葉も思い出し、
なんかちっちゃいやつきたー!
なんだかこじんまりとしてますが、特徴はコハクそのままですね。
魔力を大きく消費すると小さくなるそうです。さすが異世界、と思いましたがやはり特殊らしいです。クレオが大混乱してます。
が、ゆっくりと話している暇はありません。近くで戦争が起きていてそれが激化しているようです。逃げなければ巻き込まれるのでね。
二人がいたのは隣の地域コルカド。クレオは以前いた国が亜人差別酷いからか、とか。自分をずっとそんな状態で看病してくれてたのかとか、いろいろと考えます。
渡された食料を口にしながら、クレオはコハクに家に住んで良いぞ、と言います。さすがにここまでされて恩義を感じないほど薄情ではない、と。
あの日から――◯◯年
自分の領域に他人を入れるのは好まないクレオですが、しかし他にしてやれることもないので、と。
コハクは喜ぶかと思いきや、言いにくそうに「家なくなってるよ」と言います。
なくなってるってなんで……はぁっ?
100年経ってるだとお!
正確には108年と3ヶ月ですね。
信じがたい話ですが、本当のことだったようです。町に寄ったりして情報を得たのでしょうね。リアリストっぽいクレオが納得してしまってました。
クレオが年取っていないのはコハクが魔術で身体の時間を止めていたからで、コハクが生きているのは普通の亜人と違って長寿だから。
長寿……Helckの魔族達を思い浮かべてしまいますねぇ。
ただクレオは100年経っていること自体にはあまりショックでは有りませんでした。彼自身は変わってないし、会えなくなって困るやつもとうにいなかったから。
さらっと言ってるけど、中々悲しい過去ありそうだな。
本人が明るく言ってるからこそ、ちょっと悲しくなりますね。
ようやく手に入れたマイホームに半年も住めなかった、というのにショックを受けているクレオ。
100年後のこの世界ではあちこちで戦争が起きていて平穏な生活がさらに遠のいてました。町を見つけても争っていることが多いのです。
そんな中、二人は古城を見つけました。放棄されてしばらく経っているようです。
お酒がたくさんあります。50年前……量が多いことから密造酒だろうかなどと推測しているコハクに「何をすれば良いんだ」とクレオは問いかけます。
彼女への礼をしないといけないのにマイホームもなくなった今、クレオが彼女にできることがほとんどないのです。だから望みを聞くわけですが「生きて欲しい」としかコハクは言いません。
さらに詳しく聞こうとするクレオですが、止めました。壮大なことを言われそうな気がするから、と。
まさしくその壮大なことを望まれてるっぽいぞ、クレオ。
目を瞑ってうなっているクレオの背後で驚いているコハクが可愛いですよね。
異剣戦争――ただ生きるだけが難しい時代
自ら死にたいと思わないクレオですが、コハクの望み通り生き抜く、と約束します。
とはいえ、今はあちこちで戦争だらけ。戦地ではない場所を探すのすら難しそうな世界情勢です。コハクの望みが結構難易度が高いということが分かります。
生きるためにはお金も必要で、傭兵でも始めるかというクレオ。怒るコハクですが10年傭兵やって来たんだぞ。大丈夫だなんてクレオはいいますが
は?
あの山賊頭領みたいなのがいっぱいいる?
ここで関わってくるのが『異剣』です。
コハクは頭領が使っていた剣を拾って持っていましたが、この異剣ははるか昔に作られた剣で適正のある者がもつと剣のもつ力を引き出すことができるのです。
頭領が使っていた炎はそういうことなわけですね。
今はそんな異剣があちこちで見つかり、そして多くの戦士がそんな剣を手にしている。戦争の意味がクレオの知っている時代から変わってしまったわけです。
剣や槍、弓で戦っていた時代から、銃や戦車、ミサイルが誕生したみたいな感じでしょうね。クレオの知っている戦い方ではまず死んでしまうでしょう。
故に、人々はこの時代を『異剣戦争』と呼んでいるのです。
タイトルが繋がってきましたねぇ。
とんでもねえ時代だなぁ!
けど、異剣の適性があるかもってロマンがあるな!
ですね!
でも残念ながらこの炎の剣はクレオに適正がなかったようです。
そう上手くは行かないか……ん? この剣は?
そう。剣ごとに適正者がいるのです。なのでクレオに適正のある剣がどこかにあるかもしれません。
ちなみにコハクもこの剣には適正がなかったらしいです。
そしてクレオは何か考え込み、この城に住まないかと提案します。どこもかしこも戦争中ならここのほうが安全だろうと。自給自足して。
ただそれだけだとこの異剣の時代を生き抜くのは難しいのでやはり適正ある異剣は探した方がいい。
目指すは大陸一の……
酒場を開こう!
彼はそう提案します。
城には熟成され美味しくなった酒がかなりたくさんあります。それを利用して異剣を持ったやつが来るのを待つ。生きていく上で必要なお金も稼げる。異剣が見つかればいいですが、見つからなくてもお金が稼げる。
辺鄙な場所だからこそちょっと割高でもお金を出す人たちはたしかにいそうですよねぇ。他にも水とか食料の補充したい者もいるかもしれません。
コハクも拠点を構えることは考えていましたが、酒場は考えに有りませんでした。
少々考えに甘いところもあるものの、前向きなクレオの考えに彼女も賛成します。それにお店の経営は楽しそうだ、と。
そうしておかしな流れで出会い、おかしな流れで一緒に過ごすこととなった二人は、共に酒場を作ることにしたのでした。
第2話――水源
酒場の開業と異剣探し、を目標に掲げたクレオたちでしたが、そのためにも地盤を固める必要があるので畑を作ることにしたみたいです。
戦乱の世の中。食料の確保はとても大切です。
土地はかなり痩せているみたいなのが心配要素ではありますが6種類ほど植えてるみたいですね。
トマト・人参、豆にキャベツ、ポテトにコーンか……バランス良さそうだな。
クレオが目覚めるまで、コハクは自給自足の生活していたらしく、それで農具や種はあったみたいですね。
そのためまだ食料には余裕があるそうですが、消費されていくものですからね。
と、順調そうに見えたものの、クレオたちには大きな難題が有りました。それがタイトルにもなっている水源です。
水源がないわけではないんですが遠いんですね。片道4時間。しかもあちこちで戦争中なので道中も危険で、身を隠しつつの移動ですから一日がかりの仕事になります。
かといって水源の近いところに引っ越すかと言うと、便利すぎるところもまたいろんな勢力に狙われやすくなります。不便なところだからいいんだ、とクレオは言いました。
とはいえ、水は要です。畑にもいりますし、自分たちが使う分もあります。飲水にも、身体や服、食器を洗って清潔を保つためにも必要です。……水源が遠いのは不安です。
なのでクレオは井戸でも掘ろうと思います。
水源があるかは分かりませんが、古城には水路があるようです。近くに川がないのに水路があるということはどこかに水源があるのかも、と。
もちろん、放棄された城ですし今は水がないということは、水源が枯れたからかもしれません。けど、やらないで後悔するのは嫌だとクレオは言います。
コハクが魔術でやろうかと言いますが、彼女はただでさえ魔力を消費しているわけです。クレオは使うな。何でもかんでも頼ってられないと言いつつ、もっといい道具を取りに行くと城の中へ入っていきました。
任せてしまってもいいのに、自分でもちゃんと頑張ろうとするクレオ……マジで凄い。
頼れる存在があると、どうも頼っちまうもんなぁ。
お宝発見!?
クレオは城の中を探して回ります。ピッケルみたいなのがあればなと思ったのですがなさそうです。
しかし実はいろいろと揃えないといけないものがたくさんありました。
狩りをするための弓矢、ロープやハンマーなどの道具、家具や衣服……防寒具も必要ですからねぇ。
家具はともかく道具類や防寒具は必須だよな。
いや家具も必要だが……。
と、クレオが何かを見つけました。
魔法を使わずにクレオの代わりに井戸を掘っていたコハクは、何かを見つけたクレオに呼ばれ、行ってみると……どうやらさらなる地下への階段があったようです。
降りていくと、一本の剣が台座にささっていました。
一本だけぽつんと存在しています。しかも放置されていたにしては状態がいい。……なんだか読めてきますね。
そう、異剣です。
クレオが抜こうとしますが……全然抜けません。そこでコハクが剣に触れるのですが、途端に剣から水が溢れ出てきます。
やはり異剣であり、コハクはその適正があるようです。
どうやらこの異剣がこの城の水源だったみたいですね。
便利だな、異剣。
でも適正持ちが死んだら水源もなくなるってのはあるが。
まあ、元々水源は有限なものですしね。
どんどんと水が流れてきます。コハクは止めたいようなのですが、剣がどんどんと魔力を吸っていくらしく、身体がゆうことを聞かずに剣から離れることも出来ない。
クレオも手伝ってなんとか剣からコハクの体を離すことに成功しますが、なぜかさらに溢れる水。
ぐったりしたコハクを抱えてクレオが階段を駆け登っていきます。追いかけてくる水。
びしょびしょになりながらもなんとか外に出られたクレオとコハク。城からは水が溢れ出て、近くの窪地に流れてまるで川のようになっています。
とにかくこれで水問題は解決。剣も回収したかったところですが仕方ないですね。
でもなんか、すごく住心地の良い城になってないか?
戦乱の世の中で見つかったら攻め込まれそうですね。
ちなみにクレオに引き継いで土をホリホリしていたコハクは粘土を見つけたようです。食器や家も作れるなと盛り上がってますね。
第3話――酒場
畑にトマトがなりはじめた頃、城から馬車で30分でたどり着くところに小さな小屋が出来ました。酒場が完成したのです。
酒場っぽくは有りませんが最初に出来たものとしては立派じゃないでしょうか。しかも2人で作ったとなるとね。
ひとまず水とお酒だけの提供で始めるようです。それだけでも荒野の中では助かるでしょうしね。
なんだかコハクは楽しそうですが、クレオは少し悩んでいました。
というのもこの時代、思っていたよりも治安が悪い。かなり住心地が良くなってしまった古城が狙われるのではないかという懸念。にもかかわらずコハクは以前の強さは戻っていない、と。
酒場止めるかという話もでたわけですが、コハクがとても楽しみにしていたらしく、懸念を抱きつつも酒場開店となりました。
とはいっても、場所が場所だけに客は中々来ません。開業して1週間、のんびりしている二人ですが……誰かが近づいているとコハクが気づきます。彼女、目がいいんですよね。
張り切って接客する、と意気込むクレオ。
ガルド王国の騎士『サフィーア』
ですが、どうやらガルド王国の騎士たちらしいです。隣の小国だったそうなんですが、最近は戦で勝利してこの辺りも領土にしたようです。
さすが戦乱。地図がどんどん変わります。
王国の許可がないと店を出せない、と言われて立ち退き要求されます。
仕方ない、と許可を貰いに行くことにするクレオたちでしたが、今日これからでは途中野宿になってしまうため、明日行くから今は見逃してくれと頼みます。ソレに関しては相手の女騎士サフィーアも同意してくれましたが、コハクを連行すると言いました。
な、なんでだよ!
コハクが亜人だから、です。ガルド王国は亜人の差別が強い国のようですね。
ガルド王国では亜人の入国は禁止されているため、不法入国扱いになってしまうようです。……戦争に勝って領土が変わった瞬間から不法入国になってしまうとは、なんとも不条理です。
が、それにキレたのはクレオでした。下手にでていたとは言え、亜人というだけで牢に入れようとする彼らに文句を言い始め、サフィーアとクレオが戦うことになります。
サフィーアは実は異剣の持ち主でしたが、剣術も戦いのやり取りにも不慣れなようで一時はクレオが勝利します。
しかしここでサフィーアの異剣が凄まじい力を発揮……というより暴走し始めます。クレオは慌てて退散しますが、暴走した異剣が酒場を破壊。コハクがキレます。
術で一撃。
さらにクレオにも怒るコハク。クレオに生きていて欲しいコハクからすると、わざわざ危険に身を晒したクレオの行為は許せないんですよね。
多分真剣なやり取りなんでしょうが、ムスッとしたコハクがとても可愛いです。
とにかく謝るクレオでした。
第4話――鬼雷の剣士
なんやかんや、仲直りできて兵士たちに酒を振る舞うクレオたち。
兵士たちが「美味い」と言いながらお酒飲んでます。本当に良いお酒なんでしょうね。お金を落として行けよ、とクレオは笑いながら言います。
なんだかんだ、良いお客さんになってくれたみたいだな!
サフィーアも冷静になって、コハクに謝ってます。コハクもついムキになって、と謝ってます。彼女は長寿ですし、大人気なかったと思っているのでしょう。
そんな包容力を感じたのか。サフィーアが「コハクさん」とさん付けで彼女を呼んで抱きついてますね。クレオが「そういう店じゃない」と言って、サフィーアは「頼れるお姉さんな気がして」とまた謝ってますね。
頼れるお姉さんなのは間違いじゃないですね。
謝る気持ちがあるならもっと飲んで酒落としていけ、というクレオに騎士の肝臓舐めるなと飲んでいくサフィーア。
酒乱のサフィーア
相当にストレスが溜まっているようで、愚痴っていくサフィーア。
ガルド王国は小国だったのが最近大きくなってきたらしく、段々と軍規が厳しくなったり、異剣の適性があるからと隊長に任命されたのは良いものの、それで僻まれもするし、誰も褒めてくれないし、で辛い、と。
この時代を決めるのはやはり異剣、か。
出世すら異剣で左右されるようですね……ある意味ロマンはありますが。
現在彼女は『鬼雷の剣士』を追いかけて7日も野宿しているようですね。
鬼雷とはおとぎ話に出てくる悪魔である鬼雷人のことで、この剣士も雷を操り頭に角のようなものがあることからそう呼ばれているそうです。
剣技の腕も凄いし雷を自在に操って、異剣使いだろうと相手にならない、と。
ガルド王国に10日前ほどに現れ、100人の兵士を惨殺した大罪人だそうですが……見つからずに今もどこかにいる、と。
……これは……完全に……その、フラグだな?
三つ目の仮面
読者たちはフラグだなぁ、と思っている中でサフィーアたちは無事? に国へと帰っていきました。店の営業許可はなんとかしてくれるそうです。
サフィーアも悪い子じゃなさそうですね。立場があるからコハクを捕まえようとしただけで、結局見逃してますし。
よかったなぁと思いながらも、鬼雷の剣士の話が気になるクレオ。戦乱の世ですから、嫌でも人を斬らないといけないことはあるのに、わざわざ指名手配されてまで斬るのか? と。
なにか事情があるのかもしれない、防衛を考えないとななどと話しあいながら二人が城へ戻ると、コハクが警戒します。誰かの気配を感じるようです。
さっきの剣士か! とクレオは読者と同じことを思うわけですが、複数人いるようです。
と、突然クレオの背後に現れる仮面の人影。振り返る前にコハクが術で対応します。コハクですら直前まで気配を察知できなかったらしく、もしかするとそういう異剣かもしれませんね。
そして他にも同じ仮面――三つ目のそれを身に着けた集団はそれぞれ剣を持っていて、異剣使いっぽいです。
その仮面をクレオは知っていました。100年前にも存在した暗殺ギルドらしいです。一度狙われたら最後とまで言われているやばい組織で、傭兵の間じゃ絶対に関わるなとして有名なんだとか。
関わっちゃったな!
もうこの城は放棄か?
また現れる人影――角のようなものが見えるが……?
そこへ現れる第三者。仮面を着けていないその人物の頭には角のようなものが見え、どうやら仮面集団とその人物が敵対関係にあるようです。
クレオたちは巻き込まれた、という感じですね。
そしてやはりといいますか、鬼っぽい角がある人影は雷を操り、凄まじい力で仮面の集団を倒していきます。
どう考えても彼が鬼雷の剣士でしょうね。
仮面の集団は、分が悪いと思ったのか。よろよろしながら起き上がって撤退。鬼雷の剣士の剣士がコハクを見て臨戦態勢に入ります。コハクもちょっと本気出す、と。
慌てるのはクレオです。
慌ててコハクを抱き上げて戦いを止めるクレオ。コハクのことを心配というより、城のことを心配したようです。
なにせコハクが山賊頭領と戦った時、砦破壊されてましたしね。彼女がここで少しでも本気を出せばどうなるか……。
更にクレオはそのまま剣士の方にも文句を言います。すると剣士は「お腹が減ってるから飯をくれ」と言ってくるのでした。
謝りながらお願いしてますし、食べながらもちゃんとお礼を言っていて礼儀正しいです。言葉が通じない相手ではなさそうですね。
コハクに対して謝るクレオ。貴重な食料をあげてしまったからですね。でもコハクはむしろクレオを褒めます。クレオが止めなければ間違いなくコハクは戦っていた。少しの食料で戦いを避けられたのは大きい。
そしてコハクは鬼雷の剣士を見つめて「強いし、もっと強くなるよ」と
「彼をさ、仲間に誘ってみようか」
はあっ? でもこいつ大罪人だろ?
でも根が悪い人ではなさそうなので、事情がありそうですよね。
というところで一巻は終わりです。まだまだこれから、という感じですが気になりますね。
おまけ
おまけが巻末についており、クレオたちの能力値や酒場の名前について、酔っ払いサフィーアの話、狩りに行ってキノコゲットしたり、城での部屋決めの小話などもあります。
キャラクターたちのほのぼのしたエピソードが満載なので、ぜひ本誌で確認してみてください!
まとめ
ということで、判明したことはコチラ。
- 未来に起きるなにかのために、コハクはクレオに近づいた
- コハクは亜人っぽい見た目だが、とても長寿で魔力を大量消費すると身体が縮む
- 縮んだ姿でもコハクはとても強い
- 異剣があちこちで発見されて、異剣を使った戦争の時代に入っている
- 非常に治安が悪く、亜人差別なども強い
- クレオたちのいる城は現在ガルド王国の領土
- 鬼雷の剣士というとても強い剣士がいる
一体全体、コハクがみた未来のあの景色にはどういう意味があるんでしょうね。そしてクレオがそこにどういう関わりがあるんでしょうか。
気になりますが、同時にほのぼのしているやり取りもいいですよね。
ここからまたどんどんと面白くなるので、次回をお楽しみに!
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
まったなー!
話が進むごとにどんどんと面白くなる『異剣戦記ヴェルンディオ』の物語が見たくなったならぜひ↓コチラ↓から!
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