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少年漫画

【その着せ替え人形は恋をする】レビュー

銀づち

 最近ステキだな、と思う漫画に出会えましたのでご紹介したいと思います!

 それがコチラ!『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』です。

著:福田晋一・連載:(ヤングガンガンコミックス)

【あらすじ】

クラスのギャルと秘密の関係…?
いつも友人の輪の中心にいるギャル系美少女、喜多川海夢。クラスメートの五条新菜は、彼女を“別世界の人間”だと思っていた。雛人形の頭師を目指す新菜が、放課後被服実習室で作業していると、そこに現れたのは…まさかの…!? 二人のドキドキ山盛り☆コスプレ・スクールライフが始まる!!

その着せ替え人形は恋をする第1巻あらすじより

 簡単に言うとコスプレのお話なのですが、コスプレに興味がない私にも突き刺さったので、今回はそのおすすめポイントを紹介させていただきたいと思います。

ワン親方
ワン親方

俺っちもコスプレとか全然知らないな……よし、審査してやるぜ!

銀づち
銀づち

あはは、お手柔らかに!
でも本当に面白い漫画なのでおすすめです。

 物語はコスプレを中心に進みますが、各々の趣味/好きなことを肯定してくれる漫画です。
 女装・男装のコスプレを初め、キャラクターや作品への愛情表現の違い。好きなことをしている人たちの輝いた表情・世界観

 これがね……すごく優しくて眩しくて、美しい世界で。互いが互いを尊重しあっていて、ステキなんです。ホッとする。
 現実だと、悲しいことに相手の「好き」を否定したり貶めたりする言動が飛び交ったりもしますが、こういう世界になれば皆ハッピーでいいのになぁって心から思ったんです。

ワン親方
ワン親方

なるほどなぁ。それはたしかに、良い世界だなぁ。

 自分の好きな作品、好きなキャラ、それらの愛し方を否定されて傷ついたりしてしまった方にもそうですし、表現の仕方に自信が持てない方にもぜひ読んでいただきたい漫画です!

ワン親方
ワン親方

気になってきたぜ!
詳しく教えてくれ。

銀づち
銀づち

では、もう少し詳しい話の内容から入りましょうか。

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物語の内容ざっくり説明

 もう少しだけ物語についてお話させていただこうと思います。

物語のざっくりした流れ

 主人公は男子高校生の五条新菜(ごじょう・わかな)。雛人形を作る工房に生まれ、彼の夢もまた人形の顔を作る頭師(かしらし)になること。
 しかし彼にはトラウマが有り、学校で友達ができずにいた。自分の趣味が変わっていて、他の人に受け入れられることはないと思っていた。誰かを不快にさせるくらいならとクラスメイトたちと距離を取っていた新菜だが、とあるきっかけで喜多川海夢(きたがわ・まりん)にコスプレ衣装の制作を頼まれて――?

ワン親方
ワン親方

なんだ。主人公がコスプレするわけじゃなくて、作る方なのか

銀づち
銀づち

表紙の子がコスプレする子ですね。ギャルなんですが、とっても良い子で可愛いです。

 ちなみに主人公の新菜くんは、海夢ちゃんの化粧も行います。

 ウィッグやカラコンは当然のように出てきますが、つけまつげの付け方、アイラインの引き方、体型隠し(変形)などなど細かく描写されていて、へえっと思いました。

 私はあまり化粧に興味がないのもあって知らなかったのですが、コスプレする際には専用のテープがあり、それで肌を引っ張っることで目の形を替えてすこしでもキャラクターに近づけたりするそうです。

ワン親方
ワン親方

体型や目の形まで変えるのか!

すげぇなぁ

 奥が深いですよね。……もちろん、もっと手軽にコスプレして楽しんでいる方たちもいて、それが悪いということではなく。追求するとそこまでいくことができるんだなぁ、と。

 そしてコスプレにはイベントもあります。最初はただ二人で撮影するだけでしたが、イベントに参加して……交友関係が広がっていきます。

 学校でも文化祭があって……。

銀づち
銀づち

人形作りだけだった主人公、新菜くんの世界が広がっていくさまは、なんだかほのぼのして心が暖かくなりました。

 コスプレの話だけど、それが日常に組み込まれていて、そして漫画やアニメ好きな方たちには多かれ少なかれ刺さる部分があるんじゃないかなって思うお話でした。

注目していただきたいポイント3つを紹介!

 話の概要がわかった上で、特に注目して欲しい点を3つに絞ってご紹介!

  • 主人公がとっても頑張り屋
  • ヒロインのまりんちゃん含め登場人物ががとてもいい子
  • 創作で出てくる作品が面白い
  • おまけポイント1:作者のコスプレレポート
ワン親方
ワン親方

3つ……3つっ!?

銀づち
銀づち

おまけは数に数えなくてオーケー!

ワン親方
ワン親方

え? そ、そう、か?(なんか違う気がする)

 ということで1つずつ見ていきましょう!

主人公がとっても頑張り屋

 主人公がですね、とてもいい子で……応援したくなるんです。

 主人公はご両親が亡くなっており、人形作りの職人であるおじいちゃんとふたり暮らし。おじいちゃんは家族であると同時に師匠でもあります。

銀づち
銀づち

このおじいちゃんがこれまたいいおじいちゃんで、漫画読んでいるとおじいちゃん好きになります!

 あとピュアなところも可愛らしいんですが、2巻で一気に主人公が好きになりました。そこは後編のおすすめシーンベスト3で詳しく紹介しているのでここでは省きます。

 夢である頭師の練習をしつつも、コスプレ衣装を何着も作っていく主人公。コスプレ関係でできた人脈は広がっていき、同年代だけでなく年上、大人たちとも関わっていくことになります。

 衣装作りのために訪れる店の店員のおじさんとかもめちゃくちゃいい人で、ファンになるし。のちのち造形といって小道具を作ったりすることにも興味を持ち始めるのですが、それを教えてくれる人(社会人)も彼のことを応援してくれて……。

ワン親方
ワン親方

すごく良い縁の輪ができてるんだな

 でもそれも、主人公である新菜が頑張っているから、というのが伝わってきます。言葉や文章で書かれているわけではないんですけどね。

銀づち
銀づち

正直私もこんな子が近くにいたら応援したくなります

 応援したくなる主人公というのはやはり大きいですね。

ヒロインのまりんちゃん含め登場人物ががとてもいい子

 ヒロインの海夢(まりん)ちゃんは思いっきりギャルです。物事をハッキリ言う子で、下手すると敵も作りかねないタイプなのですが……本当に良い子です。

 私は正直、ギャルタイプの子は苦手で、いままで漫画や小説・アニメで出てきたギャルっぽい子を好きになったことはないのですがまりんちゃんは特別です。初めて好きになったギャルです。

 まりんちゃんは、『好きなものを否定しない』子なんです。

「好きなことして楽しんでる人めっちゃ好き。なんかキラキラしてるじゃん」

『その着せ替え人形は恋をする』第2巻より

 自分が好きなものは当然ですが、自分が好きじゃなくても誰かが好きなものを決して否定しない。それって、言葉にすると簡単なんですが、実際は結構難しいと思うんです。

 相手の好きなものがある程度共感できたら難しくないですが、まったく共感できないものな可能性もあるわけです。でも、まりんちゃんは否定しない。

銀づち
銀づち

主人公の新菜はそれに救われてましたが、私もなんだか救われた気持ちになりました。
お恥ずかしながら、ちょっとうるんでしまいました。

 共感まではしてくれなくてもいいけど、否定しないでほしかったんだなぁってなんだか心に突き刺さりましたし、逆に私も誰かにそういうことしてきてしまったなぁって反省もしました。

ワン親方
ワン親方

そっかぁ。オレっちも、そういうこと言ってしまってたかもなぁ。

 まりんちゃんみたいな人が増えて、優しい世界になるといいなって思いました。

創作で出てくる作品が面白い

 コスプレをする、というのには既存作品のキャラクターやオリジナルの世界観を生み出すというのもあるそうなんですが……まあ、わたしたちがイメージするコスプレは既存作品のものですよね。

 実際にまりんちゃんは既存の作品のキャラクターたちになりたいとコスプレしているわけですが、その既存作品。漫画の中に出てくる二次元作品がコレまた面白い。
 すごい名前のエロゲー(でも実際有りそう)とか、格ゲーとか四コマとか少女漫画とか。かと思えば内容がくそ重たそうなホラゲーや重厚な世界観の漫画など。

ワン親方
ワン親方

あっ、そっか。漫画の中にまた別の作品を埋め込まなきゃいけないのか……ってか、なんだそのラインナップ

 まりんちゃんの趣味の範囲が幅広い。

銀づち
銀づち

もしかしたら元ネタがあるのかもしれませんが、登場する作品の詳細が知りたくなるようなものばかりなんですよねぇ。

 あくまでも作品の中に出てくる作品でしかないはずなのに、しっかりと作り込まれていて「何その漫画。気になる」となります。

 個人的には日常系の4コマ『サバこま』というのがあるんですがコレがまた可愛らしくて好きです。いくつか4コマのシーン描かれているんですが、それがまた可愛い。

 ちなみに5巻ですね。この表紙のキャラがサバこまのキャラクターですが、4コマの方は二頭身くらいのデフォルメされたキャラになっています。

 どんな4コマのどんなキャラがこの表紙になったのかは、ぜひ漫画を読んでお確かめください。

おまけポイント1:作者のコスプレレポート

 私、作者のお話とか最初は読むけど段々と内容にのめり込んできて先が読みたいからって飛ばすことが多いんですが、この漫画に関しては11巻まで全部ここも読んでいます。

銀づち
銀づち

特に3巻から4巻にかけては筆者がコスプレ体験をしてみるお話なんですが、その苦労話が面白い。

 ふだんの化粧ではしない部分までを本を片手に行うものの、右目はできても左目はできないとか。四苦八苦しながら衣装まで身にまとったものの、ウィッグは自分でカットしなければならないことに気づいて……撮影断念、という。

ワン親方
ワン親方

おおふ。それはお疲れ様だな……そんなに大変なのか、コスプレって。

銀づち
銀づち

楽しみ方次第だとは思いますけどね。同じ服や髪形になれただけで嬉しい人もいれば、より再現するのが楽しい方もいるでしょうし。

 他にもいろいろなところに取材に行かれているのですが、その話も面白くてにやっとしてしまいました。

 漫画を読まれる方はぜひここまで読んでみていただきたいなと思います。

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おすすめシーンベスト3

 それではぁ! お待ちかねのおすすめシーンをご紹介!

  1. 主人公、新菜が歯を食いしばりながら衣装を作りあげる
  2. まりんに「奇麗」と告げる新菜
  3. クラスメイトの皆から衣装を「頼まれる」新菜
ワン親方
ワン親方

って、全部新菜のシーンかよ!

銀づち
銀づち

まあ、主人公ですからね。

私もよくよく考えてみたら全部のシーンそうだったなと後で気づきましたが。

 というか、良いシーン多すぎて絞るの大変でしたけどね。

一個ずつ見ていきましょう

主人公、新菜が歯を食いしばりながら衣装を作りあげる

 これは2巻で出てくるシーンですね。

 初めての衣装作りをしている中、おじいちゃんが倒れてしまいます。

ワン親方
ワン親方

うぁぇ、大丈夫なのかー?

 腰を打ってしまったようですが、2週間の静養で大丈夫だそうです。
 しかし一緒に過ごしている新菜にとってはとても心配なことですよね。まりんにそのことを告げる新菜でしたが、彼は一つ勘違いしていることが有りました。

 それが2週間後のコスプレイベントにまりんが参加しようと思っている、ということでした。

 ただでさえ心配事がある中、初めての衣装をそれだけ早く作らないといけない。さらには学校でも定期試験があり、人形工房の方にも工房見学の申し込みがあったり……どんどんと追い込まれていきます。

 コスプレイベント前日。新菜は倒れ込んでいました。心配事が多く、ろくに眠れておらず頭痛もしています。
 最近は人形作りのための練習もできていない。衣装もできていない。自分はなんて中途半端だ、頭師になるなんて無理じゃないか、と弱気になるんです。

 でもおじいちゃんの言葉を思い出します。

「好きだからってやっていけるもんでもねえしよぉ。
まあ……けどな。これが……好きだから大変な時に踏ん張れるもんでなぁー…お客さんの笑った顔を見るとやっててよかったなぁって思うしなぁ。

 喜んで欲しいから、しんどくてもしんどくても頑張れるもんだぞ」

『その着せ替え人形は恋をする』第2巻より

 それで新菜は、自分に期待をかけてくれたまりんのことを思い出します。

 そしてハサミや糸、針を手にするのです。

銀づち
銀づち

この時の新菜の心境は一切文字としては語られていないんですが、一枚絵としてバンっと表示された泣きながら衣装を作るその表情がすべてを物語っていて……うるってきます。

ワン親方
ワン親方

うおおおおっ、わかなああああああああ!

 ここはねぇ、ほんと、いい表情しているのでぜひ見て欲しい! 第2巻ですよ!

まりんに「奇麗」と告げる新菜

 初のコスプレイベントに参加した新菜と海夢(まりん)。
 気づくと海夢の前には撮影の列ができていて……新菜はそれを遠くから眺め、そうかこれでもう海夢とともに過ごすのは最期なのかと感慨深く思っていたら、彼女が新菜を振り返って――それがとても

ワン親方
ワン親方

奇麗だったってことだな!

銀づち
銀づち

そうなんですが、この奇麗という言葉は新菜の中では本当に特別な言葉なんです。

 新菜がおじいちゃんの雛人形を見た時に、こんなに奇麗なものがあるのかと感動して

「心を掴まれた様な感じで…『奇麗って言葉はこういう物の為にある言葉なんだ』って思ったんです」

『その着せ替え人形は恋をする』第1巻より

 なので新菜にとって「奇麗」という言葉は特別なんです。心から思ったときにしか言えないから簡単に「奇麗」とは言わない。もちろん、他の人が奇麗だと思ったことを否定するわけではなく、ですね。
 彼なりのこだわり。

銀づち
銀づち

そんな彼がですよ!
帰りの電車の中、疲れて眠りにつく寸前に「奇麗でした」と海夢ちゃんのことを言うんですよ!

ワン親方
ワン親方

それを海夢は隣に座って聞いてるわけか!
これは中々きゅんってくるやつだな

 海夢ちゃんは美人で可愛くて、容姿を褒められることはたぶん慣れていると思うんですが、新菜のその「奇麗」に対するこだわりを知っているので……重みが違うんですよ。言葉の重みが。

 ちなみにこちらの海夢に対しての言葉を言うのは第2巻です。すごく丁寧に描かれているのでぜひ見てきゅんきゅんしてもらいたいですね!

クラスメイトの皆から衣装を「頼まれる」新菜

 ここ! ここも、いい! 新菜の成長を感じるシーンです。

 これは文化祭のお話で、何もクラスメイトたちの衣装を作るというのではなく、作る対象は海夢です。
 この文化祭は勝負事になっているらしく、新菜たちのクラスはかなり勝ち気な子たちが多いので皆かつぞと意気込んでいます。
 たこ焼きをやることに決まったものの、ミスコンも同時開催でこれは女性なら男装、男性なら女装をする。このコンテストで1位を取ると文化祭のポイントに加算される。

 勝つためには海夢がいいだろう。そして海夢もコスプレできるならやりたい、ということで自然と新菜はその衣装を作ることに。

 新菜は今まで誰かに頼ることをしてこなかったため、衣装作り大変だけど内装も手伝わないとと思ってましたが、皆から「こっちはいいから」と言われ、勝つために「衣装作りを全力で頼むぞ」「皆で1位を取ろうぜ」と言われるんです。

 頑張ると返事をする新菜。生き生きとしている様子が……「うぅ、成長したな」と思わせてくれます。

ワン親方
ワン親方

保護者目線になってんじゃねえか!

銀づち
銀づち

まあ、おばさんからするとね。
でも確実に新菜の世界が広がっているんだなと感じる良いシーンでした。

 ちなみにこちらは7巻です!

 文化祭編は8巻まで続きまして……8巻にもいいシーンがあってそっちと迷ったんですが……この漫画の魅力は登場人物たちがみんな良い子、というところにあると思ったのでこちらをあげさせていただきました。

 ちなみに店員のおじさんも生き生きとした新菜の変化を感じて微笑んでいました。このおじさんもステキ。

銀づち
銀づち

あと個人的にメガネの柏木くん好きです。密かな推し。
古賀くんも好きですけど。健星くんは癒やし。

ワン親方
ワン親方

お、おうっ?
わからねーけど、良いやつが多いってのはわかった。

銀づち
銀づち

女の子達も皆良い子で、ただ名前が変わった子が多くて覚えきれない……ごめん。

 文化祭編でぜひとも推しを見つけて欲しいです。

まとめ

 その着せ替え人形は恋をする、とは……。

 人形の顔を作る頭師を目指しているものの、クラスには馴染めていなかった主人公の五条新菜(ごじょう・わかな)。そんな彼がクラスの人気者である喜多川海夢(きたがわ・まりん)からコスプレ衣装作りを頼まれ、そこから彼の世界が広がっていく。

 そんな彼の成長物語であり、

 いろんな趣味がある中で、男とか女とかは関係ない。いろんな楽しみ方、愛し方があるし、あっていいんだ。

 誰かに趣味を否定された、もしくは否定されるのではと勇気がでない人の背中を優しく撫でてくれる、そんな漫画。

銀づち
銀づち

です!
どうでしたか?

ワン親方
ワン親方

新菜を応援したくなったぜ!11巻も気になるところで終わってるし、次の造形が気になってしょうがないぜ!

 恋の行方も、コスプレの行方も気になりますね。

 ワクワクドキドキしながら、でもほっこりできる……そんな素敵な漫画『その着せ替え人形は恋をする』、ぜひ読んでみてください。

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銀づち
銀づち
マンガを熱く語ラー
名前の由来は、サイト名が工房なので道具(金槌)をもとに、金より銀が好きだなで銀づちとなりました。 好きなアニメ漫画にはかなり偏りあり。 好きな漫画にはめちゃくちゃ好きなキャラクターが登場する傾向がある。 【note】https://note.com/ginn_duchi/n/n3ca1c0754af8
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