【不徳のギルド】第90話『君がよく見える場所』――残ったのは、あなたたちとの思い出【ネタバレ感想】
前回は……なんとももう総力戦きたなぁああああ、というテンション爆上がりなのと不穏な気配がして「やめてえええ」ってなってました。
名前に込められた想い。それを知った時の感動。そこから始まる、希望のない戦い。どこかに救いがあるのだろうか。そんな風に悩んでしまう。
つまり一言でいうと。
感情のジェットコースターがやばす。
けれど、どんな戦いが繰り広げられて、どんな結末になるのか……見たい! 見たくてたまらないいいいいい! でも怖いいいいいいいいい、ヒィッ!
情緒不安定すぎる!
そんな情緒不安定にさせてくれるほど興奮させてくれる不徳のギルドを読みたくなった方は↓コチラ↓からどうぞ!
今回は、タイトルからしてやばいんですが、初っ端からグサグサと突き刺さることでおなじみのチカエルの日記もあるので、お気をつけください!
あと今回は、キッくんがちゃんとキクるってましたので、戦い大好きな方もご期待を!
キクるって何!
場面もコロコロ変わりますが、だからこそ終わりが来たなぁという感じで待ち遠しい不徳のギルド第90話のネタバレ感想ヤッていきましょう!
前回のあらすじ
呪名とは、名前に込められた数多の想い。
自分は弱いというセイテンに、チカエルは言葉について語る。魔物の名前にも、想いは宿る。言葉を大切にしていた友がつけてくれた名前に宿らないはずがない。
戦いから抜けようとするワンダに容赦ないトリューとキクル。キクルは彼に何かを頼む。
ツチガミは傷を癒やしてすぐにやってくる。マナ自体は減っても、決して弱くなっていない彼に手こずるキクルたち。
しかしそこへ駆けつけたホライゴンは、ツチガミの友達として、最後の喧嘩を楽しもうとツチガミへ向かっていく。
そしてセイテンもまた、覚悟を決めた顔でツチガミを倒すと宣言した。
セイテンの傷を癒やしたチカエルは、そっと日記を閉じた。
前話より
空を見に行こう。
今回のポイント
おい、タイトル! タイトルぅううう。
- 助けてフォーネ!
- 誰も傷つけたくない
- 空はデカくて、優しくて暖かい
マスラオウ……君の友人はすごい人だよ。
天使は空に祈りを捧げる
まずは日記から始まります。ですが今までの日記とは異なり、誰かへ当てた手紙のようです。
この手紙……今回の話を見た後でまた読みたくなるんですよね。
さすがに全部載せないが、内容はこんな感じだ!
- あなたが心や家族を与えてくれたことに感謝している
- あなたのことを恨んだりはしない
- あなたは自分を責め、優しい彼はあなたを責めるという予測
- 自分にあなたの責任を問う資格はない
- ただただあなたの心が少しでも救われることを願っている
中でもとても印象的な一文だけそのままお伝えします。
私は最後まで 蝙蝠である道を選んでしまったのだから
これがね……深いですね。
蝙蝠……どっちつかず、ということか。
ハデスマンのことを大切だと思いながらも、何もせずにいたチカエル。いえ、何もしないどころか敵対している立場のセイテンの傷を癒やしている。
どの道が正しかったのか。私には「こうだ!」とハッキリいうことは出来ません。
でもそれぞれが選んだ先がこうなるのは……なんとも……。
で、今回は場面としてはヨウミャク古道のオックリたちと、キクルたち、それとチカエルの3つが主なシーンになります。
コロコロと変わるようでいて、どれも重要なので目が離せません。
今回はヨウニャク古道のオックリたちがその後、何をしているのか、というところから始まります。
肩に触れる優しい手
荒い息遣いが聞こえてきて、まさかこんなにもシリアスなのにぶっこんでくるのかと思いきや……そういうことではなく、やはり真面目でした。
! フォーネを探しているのか!
ここすごいですよね。屍術師であるオックリだからこそ! メンバーの分け方にちゃんと意味があるのが良い!
まだフォーネが現世に残っているのかすら分からない。亡くなってから大分時間が経っていますからね。
しかしコレを考えると……以前、オックリが大活躍する可能性出てきましたね。
オックリはあのナイトメアの事件以後、今までのように死んだ魔物を操ることができなくなり、他の魔法を使おうとしていました。
今までのが『強制(ドミネト)』的に言うことを聞かせるのに対し『協力(リビデド)』をお願いするもの。
ですがうまく行ってませんでした。そりゃそうです。殺した相手に「協力して」なんて言われても「は?」となりますよね。
ちなみにリビデドは当人? の自由意志があるタイプの術になりますね!
今オックリは屍術師の基本であるドミネトが使えなくなっており、お荷物状態。しかし今回の魔物たちならば……?
なんか希望が見えてきたか?
まぁ……それが倫理的にどうなのかとか。本当に彼らにとって良いことなのか。本当にそうなるのかは分かりませんが。
オックリのその後についての話を復習したくなった方は↓第8巻↓をどうぞ!
あと、サン、セイテン、オックリたちがオックリの戦闘に関して話しているシーンを見返したくなった方は↓第12巻↓です!
最近ガードとしては弱くなってしまったオックリ。今回のツチガミ編に入る時も、サンからそのことを指摘されているシーンがありました。
これで彼女も一歩前に進めるかもしれませんね。
なにはともあれ、屍術師である彼女にしか出来ないことをするためにもとフォーネの魂を探しているオックリ。肩をぽんと慰められるように叩かれて振り返ると、明らかに女性の手っぽいフユウデがそこに……。
いたーーーーー!
見つかったことで皆わちゃわちゃしているみたいなんですが、その様子を見下ろしている人影が……。
ちょっと思い当たる人物がいて確認に行きましたが……ゼニスっぽい気はしますね。エノメの元夫。
なんかひらひらしている服と、二本の紐? が。ゼニスが着ていた服も同じようなのがピロピロしてるんですよねぇ。
違うかもしれませんが……神が保護していたとかならフォーネの魂が無事だった理由とかも理由付けできる気も……?
気になった方は↓10巻↓にゼニス出てくるので確認してみてください。
切り札の温存
一方、ヨミの洞窟では激しい戦闘の真っ最中でした。
ヒュダイが巨大なアーマー? みたいなのを被って攻撃していますめちゃくちゃ格好いい! さすがイバラの2位! お兄ちゃん頼りになるー!
ヒュダイ格好いいなぁ! 常識人だし、今後も出てきてほしいぜ!
妹に関してのこと以外はまともで人格者ですよね。
とはいえ、さすがに今回の敵が強すぎます。主力はやはりエースたち。
ここでキクルは妙なことをメイデナに指示します。盾の魔法を使って身を守れと。決して騒がずに何が起きても解除しないように、と強めに。
ハデスマンはそんなことしなくても無害ならば襲わないのにと言います。たしかに彼がメイデナを積極的に狙うことはしないでしょう。
回復手段持ちから攻撃するのがセオリーだが、無害ならハデスマンは本当に攻撃しないだろうなぁ。
ですがキクルは仲間の命を敵に預けることが出来ない、のでオカシナ会話には聞こえないんですよね。
ホライゴンもマナを削りながらハデスマンに攻撃しています。彼ら魔物はマナが無くなる=死です。ホライゴンのマナが大分少なくなっていることをどうしても気になるハデスマン。
ハデスマンが戦いにくそうにしている間にキクルはセイテンに駆け寄って話を聞きます。倒すすべがあるのかと。
セイテンはぶっつけ本番だと素直に言いつつも、格好良く「できると信じてくれた人がいる」と真っ直ぐ見返して言いました。
今回はセイテンも主役級ですね。
キクルはそれを否定はしませんでしたが、不確定要素を信じきれない性格だからか、しばらく沈黙がありました。おそらく、様々な方法を考えたことでしょう。
もちろんそれを顔に出すことはなく、その切り札は取っておくようにと言いました。いつまでかは、その時が来れば分かる、と。
やっぱり何か考えてるなぁ。
という真面目なやり取りの背後では、トキシッコが存在感を消して無害アピールしてました。
おいっ、トキシッコ! ……らしいけどなぁ。
もう救われている
シーンは過去。セイテンとチカエルの会話になります。チカエルが何やらスキルを使って自身マナをセイテンに送り込んでいるようです。
魔物がマナを失う危険を誰よりも知っているセイテンが心配しますが、チカエルは大丈夫といいます。自分には少しだけ残っていれば良い、と。
一緒にいけないことを謝った彼女は、ハデスマンが倒された後の話をします。ハデスマンのスキルである『賢者の教(おしえ)』が効果を失う。そうするとどうなるかというと……
チカエルたちが……理性を、失う?
つまり敵として立ちはだかるということに……。
魔法の届く範囲の血を操るチカエルとか……身体の頑丈さ関係ないのできつすぎますね。魔法範囲外からの攻撃しかないわけですが、ハデスマン倒してクタクタのキクルたちのところに来たら……?
それにその話を考えると、キムジナーはそういう終わりもしっかりと理解していたんでしょうね。始まった以上、どうしようもない、と。
考えてみれば彼女たちは自然発生したタイプのセイテンやマスラオウとは違うタイプのネームドです。言葉を覚えたのはハデスマンのおかげで、名前はフォーネにつけてもらった。
あと、マスラオウは誰に教わったわけでもなく字を知っていたっぽいですが、チカエルたちは勉強していました。
それとカミカイヒやナイトメアは知性はあるものの、人の言葉は喋らなかったですし、人間に対して覚える感情も違ったみたいですしね。
マスラオウやセイテンが人間に対して歩み寄ろうとしてくれているから忘れがちでしたが、ネームドの名前は人間が勝手につけるもので、本来は驚異的な強さを持つ特殊個体に過ぎないんですよね。
ハデスマンはどうだったんでしょうね?
神様として慕われていたわけですし、マスラオウたちみたいに最初から人間に好意的だったんでしょうか。
気になるところですが、チカエルの話を聞いて、セイテンはなにかに気づき、彼女を抱きしめました。
そして……泣きながら彼女に謝るのです。たくさんのものをもらったのに、チカエルのことを救えない、と。
その時のことを思い出していたチカエル。洞窟の入口を見ながら、セイテンの言葉を否定します。――ちゃんと救われたのだと。
魔法が消える時
またキクルたちのバトルに戻ります。
空とメイデナのシールドが描かれたシーンがちらっと入るんですが……これがまた伏線でニクイ。
ハデスマンの心境が描かれてるが……つれえなぁ。救いがどこにもない。
彼も自身の未来は考えていませんでした。けれど、さらに失うことを望んではいないのです。しかしこのまま戦い続ければホライゴンは……。
そんな時、キクルは小さな声を聞きました。何かを不思議に思っているような……?
その瞬間にキクルはトリューにもう温存しなくていいと言いました。トリューがそれを聞いて笑います。
なぜこのタイミングでとハデスマンは不思議に思いますが、トリューがハデスマンに向かっていきます。
色々考えたというトリューですが、シンプルが一番いいと言いました。戦いに関することはやはりキクルとは真逆。それでもやはりエースを名乗るだけあり、根本は似ている気もします。
ここでのトリューはドラゴンっぽい見た目になっていて、技もこれまた格好いいので必見! 見て欲しいですねぇ。
いえぁああ! トリューのは全部格好いいなぁ!
キクルのも格好は良いんですが、これから考えると地……
うおおおい! それ以上は言ってはいけねー!
ダメージを受けたハデスマン。以前、トリューが「力の温存はしない」と言っていたことを思い出して中々トリューも食わせ物だと思います。
全力を出したトリューはここで倒れます。しかしハデスマンは怪我を治します。……いえ、直そうとして、白魔法が使えないことに驚きました。
朝7時に使えなくなるのはハデスマンも知っています。ですがこの地の太陽の位置のことは、ハデスマンが誰よりもよく知っています。見間違うはずがない。
それでも彼はすぐにそのからくりに気づきました。――幻術。
幻術は本人がかかっていることに気づけば解けます。本来の太陽の位置はもっと高く……そして、メイデナは盾魔法を使っていたはずなのにそれが切れています。
ワンダに指示していたことはこれだったんですね。太陽の位置を30分遅らせる。
盾魔法を使え! はタイマーだったのか!
トリューにより傷を負い、動揺した隙をキクルが逃すはずもなく、追撃していきます。ですが身体を酷使しすぎたため、キクルのふくらはぎ? アキレス腱が裂けます。
今度はキクルがピンチになりますが、ここでひたむきが助けに来ます。修行で身につけたひたむきゃのん、ですね。
……討伐数がまだ0でも、ちゃんと彼女の努力が実って戦いに参加できているのがなんとも……感慨深い。
そのまま戦線離脱するキクル……柔らかいものに挟まれていますが、そのことについて今回とやかく言うのはやめておきましょう。シリアス回なので。
友を呼ぶ
ここでやってくるのはセイテン。ハデスマンとセイテンは魔物同士。セイテンのマナが増えていることに気づきます。それが誰のマナであるかも。
チカエルか、という問い掛けに頼まれたと返すセイテン。
これぞ少年漫画ああああっな会話だな!
力なく倒れているホライゴンがチカエルの名を口にします。彼女の気持ちを理解したのでしょうか。
しかしハデスマンはそれでも引けないのだと全力をぶつけてきます。まだまだ彼は力を残しています。
が、ここからセイテンのターン。ハデスマンの言葉を否定しながら、彼に向かっていくセイテン。
途中、罠を仕掛けていたハデスマン。その未来を読んだホライゴンが最後の力を振り絞ってセイテンを守りました。
ホライゴンとセイテンに接点はなく……それでもチカエルの想いを汲み取ったからでしょうね。
ホライゴオオオオオオン!
満足げな顔しているホライゴン。慌てるハデスマン。
しかしここで空気になっていたシッコこと、トキシッコが活躍します! 彼女は攻撃を当てるのが苦手なため、土魔法で無理やり周囲の土を抑え込んだみたいです。
血の涙を流し、必死に神様と一瞬とは言え争っている彼女の本気の姿……素直に格好いい。
そこでセイテンが新技を出します。
申登雲(しんとうん)。
マスラオウの姿をしたそのスキルを見た瞬間、「うおおおおおっ」と叫んでしまいました。
どんどんと男を上げていく最強の男、マスラオウ!
彼の言葉通り、セイテンが覚えている限り、マスラオウは死なない。
ハデスマンを吹き飛ばしたセイテンは、ハッキリといいます。ハデスマンのことを被害者とは思わないと。
ここでキムジナー、ホライゴン、チカエルのことを順番に語ってくれます。……詳しいことは言いませんが、全員。この戦いの結末がどうなるか分かっていた、と。
そんな中でハデスマンの気持ちを考えて、寄り添い、悪感情を取り除こうとし、願いを託した。
セイテンにマナを託したチカエル。残り少ないマナで彼女は……空を見上げ、自身の血を操って自分を殺しました。
嘘だろっ、チカエルーーーーー!
私も嘘だと思いたいんですが、血の形が天使の羽のようになっていて、光射すその景色が美しすぎて……何も言えなくなります。
空に還る
申登雲に掴まれ、上空へと連れて行かれながらハデスマンはチカエルのマナが消えたことを知ります。
憎しみに囚われていたハデスマンは、自分が脅威をすべて排除すれば家族は無事だと思っていたんですね。自分だけが……そう思って、自分が死んだらどうなるかなどは考えていなかった。
まぁ……大切だと思っていた子どもたちに裏切られて追い出され、それでも近くで見守ろうとしていたら今度は愛する人を殺されて……冷静になれという方が酷でしょう。
ハデスマンの立場で冷静に「こんなことはしては駄目だ」と思える人がいるなら、会ってみたいですね……私には無理だ。
キムジナーたちが止めなかったのは、ハデスマンが憎しみを抑えて生き延びたとしても、苦しみ続けることが分かっていたからかもなぁ。
少しでも気持ちを晴らして、終わらせてあげたかったんでしょうね。
心中だ、というセイテンには同意すると同時に、けれども心中相手たちはそれを受け入れているので……それが余計に悲しい。
でもこれが言えるのは、セイテンだからこそですよね。マスラオウに拒絶され、守られて今も生きている彼だからこその……。
そして二人は、天高くに到達します。それこそ雲があるような高いところ。
拘束を解かれたハデスマンですが、抵抗する気力ももうないようです。ホライゴンのマナももう感じないと言って、自分を落とすように言いました。この高さから死ねば今のハデスマンならひとたまりもない。
しかしセイテンが彼をここへ連れてきたのは傷つけるためではないと言って、別のスキルを使いました。
悲壮狒狒蒼天(ひそうひひそうてん)。
漢字は変わっていますが、仏教用語のようです。
マスラオウが空に求めたのは、強さではなく……暖かさと優しさ、か。
それは……スキル対象者のマナを自然(そら)に還すもの。
それによって余計なもの(にくしみ)までもが霧散していき……しかし、ハデスマンにとって大切な家族との思い出だけが彼に残ります。
優しい力に包まれていくハデスマン……地上から、プンプクとフォーネのフユウデはそんなハデスマンを見上げるのでした。
まとめ
ということで……今回は……美しいんだけど、悲しい。そんなお話となりました。
書くのも……苦しすぎた。
- ハデスマンが倒れると賢者の教が解除されて、彼によって理性を保っていたチカエルたちは人間を襲うことになる
- おそらく、キムジナー、チカエル、ホライゴンはそれが分かっていた
- ハデスマンだけが分かっていなかった
- ハデスマンは家族に敵対する存在を排除すれば問題ないと思っていた
- キムジナーは分かっていて、ハデスマンに寄り添った
- チカエルは、誰も傷つけたくないがゆえに、セイテンに託した
- ホライゴンは、ハデスマンから憎しみを取り除こうとした
結果として……ハデスマンの家族は誰一人として……そして彼自身ももう……。
セイテンがやたらと主人公っぽいセリフを述べていましたが、マスラオウとは真逆の行動をしたハデスマンにこの台詞を言えるのは、魔物として生まれながらも今は人として過ごしているセイテンしかいないでしょう。
しばらく……この余韻を味わいたい……と、思いつつ。次回分、耐えきれずに買ってしまったので近日公開します。お楽しみに!
では、ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
まったなー!
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