【不徳のギルド】第82話『明るみに出る』――すべてが判明し、彼はどう動く?【ネタバレ感想】
前回はついにキクルがツチガミの元へとやって来て、そしてツチガミが被害者から加害者になってしまったと告げましたね。
ツチガミが良い人で、被害者なのは事実。だからどうしても感情移入してしまいますが、キクルが言う通り……無関係な人も巻き込んでいるかもしれないし、ツチガミはもう加害者なんですよね。
そしてキクルのガードという職業は、人にあだなす魔物を退治するもの。守る対象の人格は問わないわけです。
単純な正義や可哀想という同情ではなく、冷静にそう言い切って自分の職務を全うしようとしているキクルは……まさしく主人公でしたね。
ただ、前回の最後に怪しげに登場したキョボクのエース・ワンダの動向が気になりますが……今回は、ワンダの立ち位置が判明します。
ワンダって誰だったっけ……? ってか、最初の始まりはどうだったっけ? など、ツチガミ編を見返したくなった方は、不徳のギルド12巻をどうぞ!
前回のあらすじ
未来は輝いて見えていたのに。
チカエルは、フォーネとハデスの結婚を心から喜んだ。自分もそんな風に誰かと恋愛するのだろうかと、憧れた。
キムジナーはハナバタの対処に困っていた。負けそうになったものの、ハナバタの弱点、魔力耐性が低いことに気づいてその身を拘束。ノマたちが助けようとするものの、コインがナイフを落としていて……。
オックリたちは警察官たちが落としたカメラや手帳から、真相に迫ろうとしていた。
洞窟内では、ツチガミが自身を認知できていないと判断したキクルが奇襲を仕掛けていた。
キクルたちが命をかける価値は町内会の面々にはない、というツチガミに対してキクルは「あなたは立派な土地神で被害者だったが、加害者にもなってしまった」と言い、要救助者の人格は問わない。それがガードだと宣言してツチガミに立ち向かう。
ツチガミはキクルたちのことを尊敬し、名を名乗ってから改めて戦いを仕掛けてくるのだった。
一方、別の場所ではワンダがハデスたちの元へ向かおうとしていた。
前話より
彼の望みは何なのか。
今回のポイント
カラーの威力が凄まじい。
- なぜ……こうならなかった……。
- 心ある敵ほど、キクルに油断しない。
- 頭では理解できても、心が納得できない展開
なんていうか……感想でも書くのが辛い。
カラーページが心に突き刺さる
今回もいつものチカエルの日記から始まるのですが、ここからカラーになっていて……表紙はなんとカラーな上に見開き。
だけどカラーか! めでたい! と素直に手を叩いて喜べないんです。
お?
あんまり良いシーンじゃないとか?
むしろ逆です。
良いシーン過ぎて喜べません。
まずは日記の内容ですが、フォーネが亡くなったという話を聞いたあとのものでした。
文字はとても流暢なのに言葉はほとんどなく……ただ「どうして」と繰り返し……紙の下の方は水滴で濡れた跡……誰がどう見ても涙でしょうね。
ああ、ついに『その日』の日記になっちまったのか。
彼女もまた再登場するのでしょうが、どういう立ち位置になるのか……気になるところですね。
そしてそんな彼女も含め、亡くなる前のフォーネとツチガミ、キムジナーにホライゴンも含めた皆が和やかに過ごしている一幕が見開きカラーでドンッと来てるわけですよ。
魔物三兄弟は若そうなので数年前の出来事なんでしょうけど……どうしてこのままではいられなかったのか。このままでいられたなら、ここにプンプクも混じっていたのでしょうが。
もう二度と見れない平和な光景がこんな素晴らしい表紙になっているわけですから、喜びたいのに喜べない、ということです。……素晴らしい絵だからこそ、胸に突き刺さる。
真相にたどり着いたオックリ
オックリは警察が落としていたカメラの映像を見て、フォーネが今まで解いたことのない擬態を解いていたことが分かった。ですがプンプクは家でもフォーネが擬態を解いているところを見たことがありません。
そんな状態で丸一日古道を歩き回って何をしていたのか。しかもその場所はカボクより離れていて、キョボクの町の方が近い場所。
オックリは手帳に載っていた二人のガード(ツチガミに殺された若いガードたち)に見覚えがあり、どこで出会ったのか考えて、思い出します。セイテンと一緒に買い物へ行った際に出会った。
彼女の頭の中でいろいろと繋がり始めます。
事故現場はキョボクの町から5キロ程度で、屍術の効果範囲は半径4~5キロメートル。そして彼女は以前同じことをしたことがあるだけに分かってしまうのです。
フォーネの転落は事故ではなく、他殺だ、と。
おろおろするプンプクとミシェリーに対して、オックリにはもう真実が分かったのでした。
ここで一気に真相が……とはらなず、場面が変わります。
引っ張るなぁ。
今までもなんとなく他殺だと示唆されていましたが……その詳細は、今回明記されます。お楽しみに!
視野……視点の広さが違う我らがエース
ヨミの洞窟ではキクルたちが会話してました。作戦の大元の何かを話しかけるトリューですが、モグラであるツチガミは聴力が優れている可能性があるため、話さないようです。
サンに頼んでいた何か、だよな。
魔物使いですから、魔物を率いて神性を削ぐということなんでしょうけどね……具体的にはわかりませんね。
そんなやり取りはやはりツチガミには筒抜けで、何か企んでるなら早くスべきと言われます。畏怖の心も神性の強化につながるからです。
しかしキクルは冷静で、力は増えたかと聞きます。ツチガミはそこで力が増えていない事に気づきました。そして同族である土地神を地上においてきた理由を悟るのです。
本当は村人のために戦いたくないだけだが物は言いよう
と、シーンがカボクの村に変わります。
そこでは残った後でどうなったのかと謎だったザンゾウとメガス(メスガキと呼ばれるヒュダイの妹)が、村人に話しかけて安心させています。
村人たちが恐れおののいている視線の先にいるのは、巨大な火の玉? らしきものを出しているショウキの姿が! ……とても機嫌悪そうですけど(笑)。
なるほどな!
ショウキに村人たちの畏敬の念を集めさせたのか。
回想シーンで嫌がっているショウキを説得するシーンがあります。たしかに恐怖からツチガミが強化されたらキクルたちにはもうどうしようもなくなってしまいます。
しかしショウキは汚れた信仰に自分の身を晒すのはしたくないようです。信仰は集めたほうが強くなれるとは言え、リスクもありますしね。今回のツチガミのケースがそのリスクの一つと言えるでしょう。
ツチガミは優しすぎて舐められたのが大きいですが……かといって恐怖を抱きすぎても討伐対象になりかねませんし……難しいところです。
中々納得してくれないショウキを見ていたトリューは、ひたむきからもお願いしてくれないかと頼みます。
ひたむきのマナは界樹と同じものであり、魔物たちにとって逆らえがたいものらしいですからね。不遜なショウキですら界樹のことを様付けで呼び、ひたむきとの初対面の時にはひたむきに頭を下げてましたね。
また、12巻のおまけでショウキの紹介があるのですがそこにも『魔物はマナがないと生きられないため、魔素の源流である界樹を至高の存在として扱う』とあります。
そういやひたむきに対してショウキの態度変だったっけ?
忘れてしまった方は、↓不徳のギルド12巻↓を読み直してみてください。そこにショウキの紹介(トリュウたちの紹介も載っているページ)とともに、ひたむきとショウキの初対面の様子が描かれています。
そして、承諾してくれたショウキの後ろでトリュウが悪そうな顔しているのが個人的に注目ポイントです!
とはいえ本当に渋々といった様子のショウキ。死んで戻ってきたら許さないと言ってますので、トリュウのことは信じてるのでしょうかね?
この二人の関係も謎だからな。早く知りたいぜ。
村人がショウキの強さは分かったからツチガミの討伐へ向かってほしいと良い、メガスが正直に「ショウキは村(おまえたち)のために戦いたくない」と言いかけるのをザンゾウが手で塞ぎ、とっさに「分け御霊(わけみたま)のトリューたちが向かっている」と言います。
それで村人たちは納得するわけですが、話を聞いていたショウキは口からでまかせとは言え……と意味深なことを考えます。
ツチガミたちの結末も気になりますが、この二人も気になりすぎますね!
ツチガミクラスの土地神を相棒にしているってあたり、トリューも普通じゃないからなぁ。
さて、そんなトリューたちはどうなっているのでしょう?
強敵だからこそ、慢心はない。
ハデスもヒュダイも、そんな視点で作戦を考えているキクルに驚きます。そしてハデスはキクルを強敵と認め、全力で倒しにかかります。
なんと周囲の土が龍の形? となって襲いかかってくるんですよ!
あー、これムリだなぁ、と思いたくなるほどの全力っぷりなのでぜひ実際に読んで確認してもらいたいです。
トリューも洞窟がなくなって空を見れるようになったので「あー」と汗を流しながら口を開けて、崩落に気を使わなくて良くなったと強がってますね。
まじで洞窟がなくなってる!
強い強いとは聞いてたけど、次元が違いすぎるだろ!
キッくんもこの人数相手にこの規模の、と驚いてますね。
ヒュダイは言葉を失い、メイデナは泡吹いてますね。キクルはどうして自分と戦う敵は慢心がないのかと残念がります。
そしてハデスはメイデナは遠くへやれといいます。戦意のない子供を殺したくはない、と。メイデナもそうしようとしますが、キクルがメイデナを抱えます。なら近くにいたら攻撃が緩むかも、と言ってますが敵の言うことを信じて味方の命をあずけることはしない、という判断からですね。
メイデナは鬼畜と言ってますが、離れた後で人質にされたり各個撃破されたりする可能性もあります。指揮官としての判断は間違いではないでしょう。
ハデスはそんなキクルに人となりが少し分かった気がする、と言いました。
全員へと襲いかかる土の竜。ヒュダイはそれを筋肉の鎧で受け止めようとしますが、質量のさがありすぎます。トリューはヒュダイを気にしますが、気にしている余裕もないですね。トリューにも向かってきているわけですし……「上等だ」と言い返せるあたりメンタルが強いなとは思うものの、この攻撃には避けるタイプのほうが有利そう。
キクルはメイデナを抱えて避けていきます。そして二人がなんとか生き延びてくれと願います。生きてさえいればメイデナが回復できますからね。
キクルの動きをメイデナのマナで把握するハデス。縮地の連続使用のような動きだと、メイデナがいなければ動きを見失う、と。
これ、つまりは視力の低いハデスにはメイデナを抱えていないキクルは認識できないということですね。
あとあとで関わってきそうだなぁ。
しかし2名退場、とぼろぼろになって気絶しているっぽいヒュダイと、吹き飛ばされるトリューが映し出され、キクルが彼の名を叫ぶ中……土の槍(トゲ)がトリューの腹を貫くのでした!
明かされる真相……
またヨウミャク古道へ。
オックリが説明します。犯人はあの二人のガード……ではなく、扮した屍術師と幻術師だ、と。
扮した……?
遺体発見の前日、古道の別の場所で『幻術で』殺された。幻術で殺されると無傷で殺すことが可能らしいです。
無傷な遺体を屍術師が操って自分たちは帰還してアリバイを作り、一日待ってから転落……他に外傷がない上に死亡推定時刻までずらされたら警察も他殺と思わないですよね。
プンプクはまさかの事実に泣き、ミシェリーは擬態が解けていたのは別のところで殺されたからかと。
不自然にキョボクよりだったのは、屍術の効果範囲が4~5キロだから……つまり犯人はカボクではなくキョボクのガード。
幻術師ワンダ・ランド
トリューが刺されたと思いましたが、彼は無事でした。攻撃が外れたにも関わらず、ハデスは冷静です。幻術を使う相手は、つまり……最愛の人を殺した直接の仇。
ここからオックリとキクルたちの側が交差します。
そう。キョボクのエース、幻術師ワンダ・ランド。
ハデスの前に立ったワンダは、「どれだけカボクを傷つける」とハデスを責める台詞を口にします。
うぅ……なんか理由があるのか?
プンプクが言うには、フォーネもワンダのことは純粋で優しいと言っていたそうですね。
でも……純粋、か。純粋さが刃になることもあるからなぁ。
オックリも「純粋」という言葉には引っかかっているようです。
と、そんなオックリたちが襲撃されます。最初はコウモリの魔物がでてきたので普通に魔物かと思いきや、屍術師が出てきたので先程の魔物も操られたものっぽいですね。
魔物に気を取られたプンプクが崖の下に蹴り飛ばされ、助けようとしたミシェリーとともに落ちていきます。オックリは屍術師をにらみますが向こうはどこ吹く風。
そんな会話をじっと聞いていたのは人形になっている彼女の兄。
オックリは今、屍術がうまく使えなくなってますが、この兄が入った人形を使ってなにかできるようになるかもですね。
ついにマスコットになってた兄貴が動くのか……なんか怒ってる感じだし、どうなるか楽しみだぜ
まとめ
と、今回は盛りだくさん!
今まで示唆されつつも明確には言われてこなかった事件の真相が判明し、敵か味方かわからなかったワンダがフォーネを直接殺した犯人であり、しかもフォーネとも知り合いだった!
フォーネからも優しいと言われていたワンダがなぜフォーネを殺したのか。そしてハデスを悪だと思い込んでいるのか。
フォーネの口にしたワンダの純粋さとはどういうものなのか。
そしてキクルはこんな馬鹿みたいに強いハデスをどうやって攻略する気なのか。
まだまだ目が話せそうにないなぁ。
3,4巻くらいまたぐかもしれませんねぇ。
これからも追いかけていきたいところですね。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
まったなー!
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