【逃げ上手の若君】第一回『5月22日』――少年の中に眠る英雄が目覚めた日【ネタバレ感想】
世間で騒がれているアニメ『逃げ上手の若君』がとても気になっていました。
ちょっとグロいというお話も聞いていて、私は苦手なのでどうしようかなと思ったのですが……ついに! ついに見てしまいました!
心配していたグロさですが……たしかにね。戦乱の時代ですのでそういった描写もあります。そしてご都合的に甘い描写……もなく絶望がある。けれど、物語としてはだからこそ胸に来ることも有り、なんとも言えない視聴感と興奮を与えてくれました。
やはりこの『絶望感』というのは物語にとってはとても重要なものですね。
そうなんですよ。生きていてほしいと思いましたし、描写だってもっと柔らかいのかなとか思ってました。なにせ『若君』がとてもかわいらしく描かれてますからね。こんな可愛らしい絵柄から、あんなのがでてくるとは思いませんでした。
けどまぁ若君が可愛くて可愛くてね……このコの成長を見守りたいと思わせてくれるのがまたニクイ。
あと、なんといっても敵の描写が良かったです。いい感じにゲスいです。これから彼らを倒していくのかと思うと、スカッとしそうだなという感じがします。
しかしながら、グロさといいますか……流血沙汰はありますし、一見可愛らしい絵柄からは想像しがたい絵柄でゲスなキャラたちが描かれるので、苦手な方はとことん苦手かなぁとも思います。
なので今回は、「気になってるけど、時代設定とか噂聞くとグロそうで怖い」と思っている方にとってどうなのか。どういう方におすすめのアニメなのかについて、物語の流れをざっくりお話しながら、考えていこうかと思います。
そして私は基本、原作のマンガがあるものに関してはマンガも読んでいたのですが、今回は原作の漫画は一切見ていませんでした。が、公式サイトの方にて何話か無料で公開してくださっていたので読んできました!
漫画のほうが気になった方はコチラ>>逃げ上手の若君(マンガ)
著:松井優征・連載:集英社(ジャンプコミックスDIGITAL)
『作品概要』
1333年、鎌倉――。幕府の後継として生きるはずだった少年・北条時行は突然の謀反で故郷も家族も全て失う。しかし時行は、生き延びることに関しては誰よりも秀でていた。信濃国の神官・諏訪頼重に誘われ、少年は逃げて英雄になる道を歩み始めた!
(第1巻説明文より)
いや、なんだかその話聞いているだけで気になってきた! という方は↓コチラ↓からどうぞ! とりあえず若君が可愛い。
あらすじ
誰よりも色気があるのが若君。
時は西暦1333年、武士による日本統治の礎を築いた鎌倉幕府は、
信頼していた幕臣・足利高氏の謀反によって滅亡する。
全てを失い、絶望の淵へと叩き落とされた幕府の正統後継者・北条時行は、
神を名乗る神官・諏訪頼重の手引きで燃え落ちる鎌倉を脱出するのだった…… 。
逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で、
信頼できる仲間と出会い、鎌倉奪還の力を蓄えていく時行。
時代が移ろう大きなうねりを、「戦って」「死ぬ」武士の生き様とは反対に
「逃げて」「生きる」ことで乗り越えていく。
英雄ひしめく乱世で繰り広げられる、
時行の天下を取り戻す鬼ごっこの行方は――。
アニメ<逃げ上手の若君>の詳細より
若君が可愛い。このコの成長を……見守りたい。
今回のポイント
平穏な日々……からの?
- 逃げまくる若君……笑顔の領民
- 逃げまくる若君……笑顔の後光
- 逃げまくる若君……笑顔の若君
最初から最後まで、タイトル通りの逃げでした。
結論:グロいのが苦手な方は要注意
結論から言うと、グロさはやはりありますね。
大丈夫な方は気にしない程度かもしれませんが、可愛らしい若君の絵柄からするとギャップもかなりあります。文字通りの首が飛ぶ上に、遺体の欠損や破壊、略奪まであると聞いただけで「う」となる方は見られないほうが良いんじゃないかなと。
で、でもこれって少年漫画なんだよな?
ですが幽遊白書とか呪術廻戦とかも少年漫画ですしねぇ……呪術見れる方だったら大丈夫だとは思います。
※ちなみに私は呪術廻戦は漫画で見ていて途中でつらくなって止めた人間で、アニメは辛いから見てません。
あとはこちらの作者様は、「人間の醜さ」の描かれ方にかなり特徴があると個人的には思っており、その醜い表情がなかなかにエグいとも思います。そこがこの作品の味でもあるとは思うのですが……。
この話聞いただけで無理っ! となった方は止められたほうが良いかなと思います。
頼重というキャラが良い具合にぶっ飛んでいて後ろ暗さをやや打ち消してくれるので、私はなんとか見ることが出来たという感じです。
ただ基本はこういう戦乱の時代の物語はどうしてもそういう場面がでてきてしまうため、しょうがないのかなという描写ではあります。
ということで、グロいのが苦手な方はここでカムバックです!
えっ?いいのか?
映像やスクショは記事内で出さないとは言え、話を聞くだけでも「う」となる方もいらっしゃるでしょうからね。
ネタバレ上等で最初にこの話題を持ってきたのもそのためです。無理せずに、ご自身が楽しめる物語を追いかけてくださいね!
逃げ上手の若君は、今日も訓練から逃げまくる
始まり方が特徴的。
効果音とともに表示される4桁の数字。背後にはアニメ……ではなく、かなりリアルな映像(静止画)が流れており、数字もどんどんと遡っていきます。
この数字は西暦か。
画面はどんどんと前へ進み、鳥居をくぐり、鎧を着た人達の姿が見えます。真面目なナレーションも入り、迫力ある映像……静止画? が勢いよく流れていきます。
ここで「足利尊氏」の名前が出てきます。
おっ!その名前は歴史についてそんなに詳しくなくても知ってるよな!
私も詳しくなくて調べたところ、しっかりと源氏の血をひいた上に、北条家とも婚姻関係という割とすごい家系に生まれてますね。
そんな彼が活躍した南北朝時代の話ではあるみたいですが、主人公は尊氏(高氏)ではなく。
1333年。というテロップとともに、なんとも可愛らしい少年が映ります。ここからが普通のアニメになりますね。
時行様と呼ばれているこの少年こそがこのアニメの主人公です。弓の稽古の時間だと家臣二人が追いかけ回していますが、時行は楽しそうにそんな二人から逃げまわります。
そう! この楽しそうに、が割とポイントです。
なんか鬼ごっこでもしてるみたいにも見えるなぁ……時行だけ見てると。
ちなみに公開されているマンガと比べると、この楽しそうに逃げている描写をアニメの方がより丁寧に描いている印象ですね。
これはどちらの描写が良い悪いかではなく、媒体としての性質の違いかと思われます。アニメであればそういう場面を差し込んでもダレにくいですが、マンガでいきなりながながとそれを見せられてもちょっと……とはなってしまいますからねぇ。
ま、単純に尺の都合と言われたらそれはそうでしょうが、媒体の違いはあるでしょう。
アニメだと主人公の姿が映し出されるまで少し時間がかかってますが、やはりマンガだと1ページ目からちゃんと映されています。
あと、家臣たちとのやり取りがすごく丁寧に尺を取っているのがアニメですね。これもアニメだからできることでしょうね。物語の最初は惹きつける必要がありますが、その点で言うと最初のリアル描写とナレーションでかなり惹きつけられますから。
始まり方がマジで格好良かったです!
そしてその後に続く……なんとも平和に見える主人公、時行と家臣たちとのやり取りがあるからこそ、後々の展開がぐっとくるわけです。
で、ここで筆者、原作者が「ネウロ」の方だと気づいて興奮してます……そりゃ面白いわ。
しかしこう……改めて見ていますが、若である時行と家臣たちの日常、みたいなやり取りが微笑ましい。ここだけ見ていると戦乱の時代の話とは思えません。
ここで、高氏の話が出てきます。ちょうど出陣するときのようですね。
高氏? 尊氏じゃないのか?
この段階では「足利高氏」です。後にとあるお方から一字貰って「尊氏」になるからですね。
また、ここにおける身分の差でいうと時行の方が高氏より上です。時行は北条家の次男ではあるものの長男である邦時よりも母の身分は高く、高氏はそんな北条家に使える家系ですからね。そのままでいけば将来は主従関係になった可能性があるわけです。
※この作品では時行が跡取りという話が出てきますが、歴史上本当にそうだったのかは私には分かりませんでした。
ここらへん、アニメでは特にテロップがあるわけでもないため、状況が把握しにくいところではありますが、マンガの方ですと登場人物の名前がしっかりと記載されているので、歴史はあまり得意でない方は漫画版のほうがそこは把握しやすいところがあるかもしれませんね。
特にこの時代の人たちって名前ややこしいしな……漢字とか似てたりするし。家系図とかもあるしなぁ。
混乱しがちな方は漫画版も合わせて見られると良いかもですね。
音だけだと、やはり聞き逃してしまったり、頭の中でうまく漢字変換できなかったり、家系の繋がりが分かりづらいもするんですよね。もちろん、一時停止したり何回も見れば分かりますが。
時行と家臣、鎌倉の人々――様々な笑顔
家臣から逃げている時行でしたが、聴衆の中に紛れ込む彼を見つけたのはその高氏でした。笑顔で時行に声をかけてくる高氏。対応する時行も高氏に嫌な感情というのは特に抱いていないように思います。
そして挨拶をした高氏は出陣していきます。
私はあまり歴史に詳しく有りませんが、この年代は島流しとなっていた後醍醐天皇が隠岐を脱出した(元弘の乱にて廃嫡され、代わりに光厳天皇が即位)のをきっかけに近畿で倒幕運動が活発になっていたみたいですね。
(参考>>日本史上最悪だった男~足利尊氏)
なるほど。だから高氏はそれらの乱を沈めに行ったのか。
なので高氏も「後醍醐先帝の乱を鎮める」と口にしてますね。
そして活躍を祈ると応える時行なのですが……もう……この時の表情が超絶かわいい! か~わ~い~い~!
急にどうした! 落ち着け!
微笑んで去っていく高氏ですが、視聴者視点から行くと「怪しげな笑顔」に見えます。さらにいうと側近の男(この時に名前は出てきませんが「高師直(こうの・もろなお)」です)の表情も、なんとも言えません。
漫画ではこの時点で師直は出てきませんが、アニメでは出すことで印象を残しているのが……尺の都合もあるかもですが、にくい演出で私は好きです。
高氏を見送る時行に話しかけてくるのは同じ年くらいの女の子。彼女の名前は清子。幕臣摂津親鑑(せっつの・ちかあき)の娘です。
清子はどうやら時行の妻になろうと考えているみたいです。単純に惚れているとかではなく、彼の良いところと悪いところを受け入れたうえで、お飾りだろうといい暮らしはできるし自分の嫁ぎ先として最高だと。
目がお金になってて、とてもいいキャラしてます。こう、清々しい。
しかしお飾りの父親の姿が……いろんな意味でやばい描かれ方してないか、これ?
お飾りの主君が悪いのかと言うと、時と場合によっては決して悪くはないんですけどね。安定した世の中なら、むしろ下手に何かしでかされるより、優秀な部下たちがいれば事足りますし、というかむしろその方が良いこともあるでしょう。
と、そんな事を話している間も、時行は逃げていきます。
そしてついに追いかけていた二人の幕臣が遠くへ行き、そんな時行にまんじゅう? を手に声をかけてくれたのが兄・邦時(くにとき)でした。
ここもアニメ版のオリジナルシーンですね。
けど、セリフ自体は漫画でも後々出てきますので、そんなに大きく変わるわけではないですが。
仲良さそうにしてるなぁ。
二人が史実でも仲良かったのかは調べてもよく分かりませんでした。ですが邦時は庶子の子であり、時行の母は二位殿? というお家騒動に巻き込まれそうな関係ではありそうです。
と、史実はともあれ、物語では二人はとても仲が良いようですね。
そんな二人のもとに、登場時から時行を探し回っている幕臣たちがやってきます。屋根の上ですが、そこでも時行は関係なく逃げていきます。
そしてやっぱり楽しそうに逃げる時行。追いかける二人。そんな姿を見て笑う女性たち。鎌倉の町の人々。
これぞ平穏……という日常がそこにはありました。
怪しげな後光男と英雄
逃げ切った時行は、丘の上にある桜の木に登ります。そこから鎌倉の街を見下ろし、語るのです。鎌倉の街が好きだ、と。
語っている最中に、さっき追いかけていた二人と町の人達の様子も流れているのが良いな!
清子ちゃんの姿も映ってますね!
みんなの笑顔が好きで、地位も名誉もいらないと語る彼は、平穏な時代ならば名君になったかもしれません。
怠惰でも臆病でも良い。ただこの街で生きていきたい。
現代の皆が強く思っていることでもありますね。
と、そんな彼に声をかけてくる少女がいました。巫女の格好をしていて、時行とあまり年齢は変わらないように見えます。
彼女に驚いていた時行でしたが、突然背後に現れためちゃくちゃ怪しい笑顔の男にさらに驚きます。なんかめっちゃ光ってますし。
そう! アニメ見た時、この笑顔の雰囲気をどこかで見たとは思ってたんですよねぇ……原作がネウロの人なら納得です。
時行がめっちゃびびってるが、気持わかるぜ!
これは「なんだこいつっ」ってなる。
すごい後光がさしているこの男、名を諏訪頼重(すわ・よりしげ)。信濃国の神官と名乗ります。
歴史上でははっきりしない点も多い人物みたいで、父親も諸説あり、別名として盛高もあったり、諏訪大社の大祝と言われていたりいなかったりだそうですが、実在したのは間違いなさそうですね。
この作品における頼重の立ち位置は武将というより未来が見えるというオカルト的な側面の強い、怪しげな自称神官みたいな感じみたいです。なのでその服装や言動にはあまり武将らしさはないですね。
そして先程の女の子は頼重の娘? で雫ちゃん。可愛いですね。彼女は巫女らしく、秘術が行え、事務も得意なんだとか。
なるほど。結構ファンタジー要素も加わった歴史もの、というわけか。
なので歴史について詳しくなかったり、あまり興味がなかったとしても楽しめそうですね!
頼重は未来が見えるそうですが、全部が全部ハッキリ見えるわけでもないみたいですね。そういうところ妙にリアル。……まぁ全部見えるならばこの戦乱の時代、有利すぎますからね。
ボケとツッコミならツッコミ側だということが判明した時行でしたが、頼重は時行が2年後には英雄となるだろうと言います。ここはとたんに真面目なトーンになって、声優さんすげぇと思います。
しかしながら時行はそんな胡散臭い男の話は聞いていられるか、と即座に逃亡するのでした。
時行は自分自身がそんな器(英雄)ではないと思っていました。ただ周囲に操られるだけの存在に過ぎないと。なのに頼重の目はとても真剣で……それを振り切るように、時行は逃げるのでした。
英雄になる条件
夕刻。
時行は兄の邦時と蹴鞠? をしていました。頼重の話を聞いた邦時は頼重の言葉を少し理解してました。時行は自身や父親とはどこか違う、と。
「何か一つ条件が整えば、お前だけは英雄になれる。
そんな気がするよ」
そして邦時が蹴った蹴鞠が高く飛び上がり、姿を消します。二人共キョロキョロとします。屋根の上に乗っていた蹴鞠はやがて転がって屋根から落ちて……。
ここからがグロ注意、ですね!
えっ、いきなり!? 蹴鞠してただけだぞ?
この転がり落ちた蹴鞠が人の首として描写されるのです。
高氏の謀反と英雄の条件
高氏のシーンになりますが、人が細切れにされる描写があります。とはいえさすがに切られたっぽい描写だけで、その後は血が飛び散る描写になりましたが。
とはいっても、生首が飛んだりはするんだな。
はい。更に言うと生首の串刺しみたいな描写も後々にあったりします……そんなに生々しく描写されているわけでは有りませんが。
北条本家? に高氏が後醍醐先帝とつながって北条に反旗を翻した、という話が入ってきます。
そしてあっという間に鎌倉は支配されてしまいます。
なんとも言い難い暗い音が流れる中、若君を追いかけていただろう武芸指南役の二人が戦士した様子が流れ、清子の父親である摂津親鑑(せっつの・ちかあき)が自害、娘の清子は略奪の上惨殺……と。
特に清子ちゃんの描写は……なにか色々想像してしまいそうな感じになっています。
う。歴史のこと考えると分かっていたこととは言え、つれぇな。
特に物語の最初の方で生き生きとした姿で描かれていた人々に起きたこと、と考えると……ね?
そしてまた、大勢の武士が死んでいる映像が流れる中、テロップで表示されるのです。
「英雄になる条件は
少年が全てを奪われること」
ここね。あえてナレーションを入れず、文字だけにしたのはにくい演出です。ナレーションにしても良かったかもしれませんが、静かな中での絶望感がよりふつふつと湧いてきます。
声がなく、音も少なく、真っ黒な背景に白い文字でただ書かれているだけのその文言が見た人に与える印象というのはたぶんかなり千差万別だと思います。必要最小限の描写だからこそ、想像を掻き立てるといいますか。
個人的には「くぅっ」ってなりました!
語彙力、とツッコミたいが……気持ちはわかるぜ……なんか、来る。
ただ、ちょっとフォントが可愛すぎた(柔らかすぎた)かなとは思いますけども。
高氏のシーンです。……なぜか半裸(笑)。
炎が燃え盛り、周囲にはたくさんの死体がある中で、高氏はどこか楽しそうにも見える顔で「声が聞こえる」と天を仰ぐように言うのでした。
そして同じく炎に包まれる中で自害した北条家の当主と家臣たちが映し出されます。傀儡だったとは言え、時行の父親は自害したというのは武士としての矜持があったのか。ただ単にこの時代における当たり前の行動だったからだけなのかは定かでは有りませんが、時行は父親が死んだのをハッキリと見たわけです。
そして若君は逃げる
呆然と佇む時行。無理も有りませんね。あっという間に鎌倉幕府は滅んでしまいました。
そんな時行に声をかけるのが、あの怪しげな男頼重です。どうやら父親の高時が息子はまだ幼いからここで死なせるのは忍びないと、頼重に時行のことを任せたようです。
すごく呆けている姿だったが、そういうところはちゃんとしてたんだな。
この人も30歳くらいで、すごく若いんですけどね……。
周囲が騒がしくなります。北条を狩りに来たのでしょうね。時行の腕を引いていく頼重ですが、時行はつい数分前まで見せていた笑顔をどこへやったのか。沈んだ面持ちと声で嫌だと。父親たちと一緒に死ぬのだと言います。
それでも自暴自棄だったこともあって、燃え盛る建物から外に出て、裏切りの武士たちによって破壊される鎌倉を、丘の上から見下ろす時行。彼の頭の中には自分に優しく笑顔で接してくれていた高氏の姿が浮かんでいました。
あれも偽りの笑顔だったのか。
そんな時行の背後から声をかける頼重の笑顔は、それはもう怪しく輝いています。……文字通り輝いてます。
うおわっ、眩しいし、超絶うさんくせー!
娘の雫ちゃんですらインチキだと思っているようなので、相当なんでしょうね。
時行は諦めたように鎌倉を見下ろしています。一月もたたずに滅ぼされた国を見下ろします。英雄と頼重は言ったが、高氏のような者こそが英雄なのだと。だから武士らしく潔く死なせてほしいと。
ここで略奪の光景が映し出されますが、まぁまぁひどい光景です。ここだけ見ると、日本史を知らない人が見たら日本は首刈りの野蛮な人という印象が出そうなくらいですね。
具体的に言うと、クビがいくつも串刺しにされた状態だったりが映されてます。お金を奪っている様子もあるので、略奪、という言葉で浮かべるイメージには近いかもしれませんけどね。
しかし人間のクビはかなり重たいし、クビを切り落とすにはかなりの技量が必要と聞きますし、首に価値があるのは身分あるもので……倒したという証明のためであるため、一般人の首を落としていたかは定かではないですが。
まぁ、戦いの凄惨さを描くにはわかり易い表現ですね。
自分も死ぬのだという時行。そんな彼の背後に回る頼重。そして「では死になされ」と彼を崖から突き落とします。
驚きながらも、受け入れたような顔をする時行。しかし彼は無抵抗なまま落ちるのではなく、体勢を整えて着地します。
略奪して笑っていた兵士たちはそんな時行を不思議そうに見、頼重の「北条の子だ」という声に、まさしく鬼のような様相へと変わりました。
うえええ、こいつらこええよおぉ。
これ! これこれ!
これこそがこの作者さんの描写。人間の中にある醜さの根源を抽出させたような表情! 最高です!
アニメでは絵のタッチを変え、筆で描かれたようなものにしてますね。これはこれでいいですね!
単純な流血表現よりも、この作品はこっちの表情のほうがグロいかもしれませんね。
そして英雄は舞い戻る
時行に襲いかかる兵士たち。彼の身なりの良さから「北条の子だ」という声を信じたのかもしれません。
時行は死にたいと言っていたにも関わらず、ぱっと顔を上げ、襲いかかる刃を避けていきます。この動きが最高ですね! アニメならではの迫力と勢いを持っていて、丸腰で戦場を駆け回る時行が生き生きと描かれています。
反対に、時行を狙う兵士たちの顔は鬼のように描かれているのが対照的です。
兵士たちの中を舞い飛ぶ時行は、そんな自分を見つめる頼重と目が会い、怒った声を出します。そして兵士たちをかいくぐり、その小さな体にそぐわぬ大きな翼を広げるようにして、再び崖の上へと舞い戻るのです。
そんな時行を受け止める頼重。頼重には分かっていたのです。時行という存在は、「絶望の底の死の淵に立ってこそ、彼の中にある英雄は輝く」のだと。
そしてそんな頼重の胸の中に飛び込んだ時行が放ったのが次の言葉です。
「こら。死んだらどうする」
さっきは死なせてくれと言ってたのにな。
しっかりと額には青筋ならぬ赤筋が浮いていて怒っているわけですが、汗をかき頬を赤らめているその姿はとても可愛らしく、どこか艶めいても見えるため……なんか性癖に引っかかった人たちによって炎上したとかしてないとか聞きました。
詳しく調べてませんが、実はその話を聞いてこのアニメに興味を持ったのが私です!
どんなところから興味湧いてんだよ!
私の性癖にも刺さったからです!
いらない情報!
そんな個人的事情もあって、この若様の姿が見れただけで割と満足もしてしまいましたが、声も素晴らしかった。何度もリピートしました! 最高です! ヒャッハー、若君ーーーーー!
時行の中にある『英雄』とは
頼重はそんな可愛らしい若君を間近で見つめて、死ななければと言いながらも今楽しそうに生きながらえた、とその行動を指摘します。
そんな事はいいからその場所を代わってほしいとちょっと思ってしまう……いや、戦乱の世の中なんて無理だけども。……イヤでも一瞬でいいから代わりたい……若君ぃ。
とりあえず落ち着け?
若君……時行は恥ずかしくなりました。
そう。
口では死なせてくれと言っていたのに、体は生きようと動いたのです。それは彼の中にある武士の行動とは程遠く、恥ずべきものとして根付いたものでした。
そして恥ずかしそうにしている若君がこれまた可愛いのである。
はぁ、可愛い~~~~。
頼重は「逃げ上手隠れ上手は英雄の片鱗」と語ります。生存本能の怪物。生き延びるという才能に誰よりも特化している、と。高氏にとっては天敵だろうとも。
矢が降り注ぐ中、不思議と頼重には当たらないのは彼の不思議な力なのでしょうかねとは思ってしまうものの、ここでいいなぁと思ったのが「漫画の絵が出てくる」ところです。
殺すことで英雄となる高氏と、生き延びることで英雄となる時行。
対局な二人を表す絵が漫画の方にも出てましたが、これをアニメにもそのまま使っているみたいです。けどBGMといい、説明する頼重の声も相まって、すごくいい雰囲気でした!
少なくとも私は好きですね。原作を知らなかったのですが、こういう原作の描写がアニメでも生かされるのとか個人的には大好物です。リスペクトもとても感じますしね。
頼重の声はあの中村さんですし、まぁ本当にいい声。
そして天下を揺るがす鬼ごっこが始まる――。
最後、馬に乗って逃げていく途中のやり取りもいいですね。
真面目モードの頼重はまぁ……普通に格好いい。
涙を流す時行に声をかける頼重の声は優しくて、まぁ色っぽい。普段からそうなら格好いい2枚めキャラなのに! でもそうじゃないのがいい!
この、生きることにトキメイたから責任取れと涙を流す時行が可愛いのはもちろんなのですが、そんな時行に「もちろん」と返す頼重の声を聞いて欲しい。本当にいい声。分かっていたけどいい声!
つまりお前さんの性癖に刺さったか。
ぶっ刺さりました!
ということで、今回は終わりです!
まとめ
この物語は歴史ファンタジーものであり、その中でも戦乱の時代のその中心とも言える人物にフォーカスしています。そのため、以下のような方におすすめです。
- 歴史(物)や歴史のIFを考えるのが好き
- 歴史ファンタジーが好き
- 著者の松井優征先生が好き
- 多少のグロさ(流血や人間の醜さ)は大丈夫
グロさに関しては松井優征先生が好きな方なら問題ないかと思います。
暗殺教室には詳しくないですが、魔人探偵脳噛ネウロも原作結構グロいですしね(筆者、アニメ版はあまり知りません)。流血とかそういう物質系? のグロさならこっちのほうが今のところグロいかもという印象があります。ちゃんとした化け物描写もありますしね。
逆に言えばこういう方にはおすすめしません。
- 歴史(物)が苦手
- 歴史の解釈に強いこだわりがある
- グロい(流血や人間の醜さ)描写が苦手
- 登場人物の死が耐えられない
?
1と3や4は分かるが2はなんだ?
漫画の方を少しだけ読んで、作者の強いこだわりを感じたのですが、その分史実に詳しい方にとっては「そこは違うだろ」と違和感とか嫌悪感抱く可能性も高いなと思ったためです。
一つの歴史フィクション、歴史ファンタジーとして楽しめるかの度合いは人それぞれですからね。
私もほんの少しだけこの時代のことを調べてみたところ、作者様の解釈とは違う意見もかなり見受けられました。
そこを「そういう解釈もあるよね」と受け止めたり、「もしもそこでこうなっていたらたしかにこうなったかも」というIFも受け入れるつもりでいないと、純粋にこの作品を楽しめないと思ったからです。
こだわりも大事だが、あくまでもフィクションのエンタメ作品だってことだな。
ファンタジー要素も結構見受けられるので、流石にこの作品を史実と思う人はいない……と、思いますけどね。
しっかりと歴史について調べて作られたのだなとは思いますし、歴史に興味を持つきっかけとしてはとても素晴らしいとも思うので、歴史に興味があってグロいのもある程度大丈夫ならば是非見てほしいですけどね。
物語としてはまだまだこれから。時行が英雄になる過程は次以降からとなりますが、引き続き追いかけていきたいと思ったので、また次回お会いしましょう!
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
まったなー!
人の美しさと醜さと。両方がしっかりと描かれている『逃げ上手の若君』の、若君は超絶可愛いというのを見たくなった方は↓コチラ↓からどうぞ!